暴風雨に強い家とは?建てる時におさえておきたいポイント
風に強い家の設計
風に強い家の設計は、自然災害から住まいと家族を守るために非常に重要です。
暴風や台風が多い日本の気候では、風圧に耐えられる住宅設計を考慮することが求められます。これから戸建て住宅を購入する際には、以下のようなポイントを意識すると良いでしょう。
・屋根の形状と勾配
屋根は家の中で最も風の影響を受けやすい部分です。
強風に弱い家では、屋根が飛ばされることがあります。風に強い家を建てるためには、寄棟屋根や片流れ屋根などの風の抵抗が少ない形状を選ぶと良いでしょう。特に寄棟屋根は、全方向からの風を分散できるため、耐風性に優れています。
また、勾配を適度に持たせることで、風が屋根に直接当たらず、流れやすくなるため、屋根の飛散や損傷を防ぎやすくなります。
・構造体の強度
家の骨組み(構造体)が強固であることも、風に耐える設計には不可欠です。日本で一般的な木造軸組工法では、柱や梁をしっかりと固定するために筋交いや耐力壁が使用されます。筋交いは、家全体を風圧から守るために重要な役割を果たし、耐力壁は建物の横方向の力に耐える構造を強化します。
さらに、最新の住宅では、制振ダンパーなどの技術を活用して、地震や風による揺れを吸収する設計もあります。これにより、長期的な耐久性も向上します。
・屋根材と固定方法
屋根の素材と、その取り付け方も耐風性に大きく影響します。一般的に、瓦屋根は風で飛ばされやすいイメージがありますが、釘打ち固定や金具固定を用いることで、風に対する耐久性を高めることが可能です。
さらに、金属屋根やスレート屋根など軽量な素材を使うことで、風圧に強く、飛散のリスクを減らすことができます。実際に、強風地域で金属屋根を採用している事例も多くあります。
・屋根と壁の接合部の強化
風が屋根の下に入り込むと、浮き上がりや吹き飛ばしが発生することがあります。これを防ぐためには、屋根と壁の接合部をしっかりと固定することが重要です。軒天や破風板を強化することで、風の侵入を防ぎ、建物全体の耐久性を高めることができます。
・地域特性を考慮した設計
日本は地形や気候が多様で、地域によって風の強さや頻度が異なります。例えば、台風の多い地域では、耐風等級を参考にした設計が推奨されます。耐風等級は、建物がどれだけの風速に耐えられるかを示す指標で、等級が高いほど風に強い設計とされています。
例えば、等級3は風速60メートルに耐えられる性能を持ちます。これを基準に、風の影響が大きい地域では等級3以上の設計を選ぶと良いでしょう。
・家の配置と周囲の環境
建物の配置や周囲の環境も風に対する影響を大きく左右します。例えば、風よけとなる植栽や塀を設置することで、建物に直接当たる風の強さを軽減することができます。
また、隣家との距離や高低差も、風の流れをコントロールする重要な要素です。風の抜け道を意識した配置を検討することで、風圧によるダメージを減少させることが可能です。
耐風性能を高める外壁材
暴風雨に強い家を建てる際には、外壁材の選定が非常に重要です。外壁材は、強風や飛来物に対して耐える力が求められます。
また、雨風を防ぎ、家全体の耐久性を高める役割も果たします。以下では、代表的な外壁材とその特徴、耐風性能の観点からの選び方を解説します。
・サイディングボード
サイディングボードは日本で広く使用されている外壁材です。特に窯業系サイディングは、セメントと繊維を主材料としており、耐久性が高く、強風や飛来物にも比較的強い特性を持っています。窯業系サイディングは、耐風性だけでなく耐火性も高いため、防災面での安心感もあります。
ただし、サイディングボードは経年劣化により、継ぎ目に隙間ができやすく、定期的なメンテナンスが必要です。防水性を保つためには、シーリング部分の補修が欠かせません。これにより、暴風雨時の雨水侵入を防ぐことが可能です。
・金属系外壁
金属系の外壁材は、ガルバリウム鋼板やアルミニウムを使用したものが主流です。これらの材料は、非常に軽量でありながら強度が高く、暴風時に建物への負担を軽減します。
さらに、ガルバリウム鋼板は耐食性に優れているため、海岸近くの風が強い地域や、塩害のリスクがある場所でも安心して使用できます。
一方で、金属系外壁材は断熱性能が低い場合があり、しっかりと断熱材を併用する必要があります。また、傷がつきやすいというデメリットもあり、飛来物などによるダメージには注意が必要です。
・モルタル外壁
モルタル外壁は、セメントと砂を混ぜて施工される伝統的な外壁材で、重厚感があり、耐久性に優れています。モルタル外壁は密着性が高く、強風時にも剥がれにくいという特徴があります。また、デザインの自由度が高いため、好みに応じた仕上げが可能です。
ただし、モルタルはヒビ割れが生じやすく、暴風雨時に雨水が侵入する可能性があるため、定期的な点検と補修が重要です。また、施工の質によって耐久性が大きく変わるため、信頼できる施工業者を選ぶことがポイントです。
・外壁材の選び方とポイント
外壁材を選ぶ際には、耐風性能以外にも、防水性、耐火性、メンテナンスのしやすさなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。
暴風雨に備えるためには、風が強い地域や海岸沿いなど、立地条件も考慮した材料選びが大切です。
また、施工時には、外壁材だけでなく、取り付け方法や下地の処理も重要です。しっかりと固定されていない外壁材は、強風時に飛ばされるリスクがあるため、施工業者と密に相談し、耐風性能を最大限に発揮できる取り付け方法を選びましょう。
・メンテナンスの重要性
どの外壁材を選んでも、長期間の使用に耐えうるよう、定期的なメンテナンスが不可欠です。暴風雨の後には、外壁にダメージがないか点検し、早めの修理を行うことで、長期的な家の耐久性を維持できます。特にシーリングやヒビ割れのチェックは重要です。
また、季節物を収納するスペースとしても利用でき、季節の変わり目に物置の奥から引っ張り出す手間を省けます。
窓やドアの強化
暴風雨に強い家を設計する際、窓やドアの強化は非常に重要です。風圧や飛来物によるダメージを最小限に抑えるため、耐久性の高いガラスやフレームを使用することが求められます。
例えば、強化ガラスや合わせガラス(ラミネートガラス)は割れにくく、飛来物の衝突時にも家の内部を守る効果があります。また、シャッターやストームウィンドウを設置することで、さらに防御力を高めることができます。
ドアに関しても、強風に耐えるために、頑丈な素材でできたドアを選ぶとよいでしょう。金属製や複合材を使ったドアは耐久性が高く、風や衝撃に強い特徴があります。加えて、ドアのヒンジやフレームも補強し、強風によるゆがみや破損を防ぐことが大切です。
基礎の強化と土地の選び方
暴風雨に強い家を建てる際には、基礎の強化と土地の選び方が非常に重要です。これらは家全体の耐久性と安全性を左右し、自然災害から家を守る鍵となります。
ここでは、基礎の強化方法や土地選びのポイントについて具体的に解説します。
・基礎の強化方法
家の基礎は、暴風雨や洪水、地震などの自然災害に対抗するための重要な部分です。一般的にはコンクリートの「布基礎」や「べた基礎」が使われますが、暴風雨の影響を考慮する場合、より頑丈な「杭基礎」も検討する価値があります。杭基礎は、地盤が柔らかい場所や、地震に強い構造が必要な場所で特に有効です。杭を地中深く打ち込むことで、地盤が安定し、家全体の強度が向上します。
また、べた基礎は、家全体を鉄筋コンクリートで覆うため、均一な強度を提供し、地震や強風による基礎の損傷リスクを軽減します。強風で家が揺れた際、基礎がしっかりしていれば建物全体の揺れも抑えられ、暴風による倒壊のリスクが下がります。
・土地の選び方
土地選びも暴風雨に強い家を建てるための重要な要素です。まず考慮すべきは、洪水や地滑りのリスクが少ない場所を選ぶことです。
日本では、洪水ハザードマップや地盤データが公開されており、それらを利用して安全な場所を見極めることができます。例えば、山間部や低地ではなく、標高の高い場所や水はけが良い土地を選ぶことが理想です。
さらに、土地の風向きや周囲の環境にも注意が必要です。平坦な土地は風が通りやすく、暴風の影響を受けやすいですが、周囲に山や建物がある場所では風を防いでくれることがあります。特に海に近い場所は、強風の影響が大きいですが、防風林がある土地や、風の通り道にならないような配置の土地を選ぶことで、風の影響を最小限に抑えられます。
・地盤の強度と排水性能
土地選びの際には、地盤の強度も重要です。地盤が弱いと、強風や大雨の際に地盤沈下や家屋の傾きが発生する可能性があります。
地盤調査を事前に行い、必要に応じて地盤改良工事を施すことが推奨されます。地盤がしっかりしている土地を選ぶことで、長期間にわたり家の安定性が保たれます。
また、排水性能も考慮すべき点です。豪雨の際に水が溜まりやすい土地では、浸水のリスクが高まります。自然な傾斜があり、水が流れやすい土地や、排水溝や側溝がしっかり整備されている土地は、雨水がたまりにくく、浸水被害を防ぎやすくなります。
・地形の選択
最後に、土地の地形も暴風雨対策の一部です。暴風雨の強風を受けにくい地形や、自然の防風壁となる山や高い建物に囲まれた土地を選ぶことも、長期的な防災対策となります。特に風の通り道になる谷間や、風が集中する高地は避けることが理想です。
メンテナンスと長期的な対策
暴風雨に強い家を維持するためには、家の設計や素材選びだけでなく、定期的なメンテナンスと長期的な対策が不可欠です。特に日本の気候では台風や強風による被害が多発しているため、家を長持ちさせるためのメンテナンスが、災害時の被害を最小限に抑えるカギとなります。ここでは、具体的なメンテナンス方法や長期的な対策について解説します。
・定期的な外壁の点検と修繕
外壁は家を風雨から守る重要な部分です。暴風雨が頻発する地域では、外壁がダメージを受けやすく、その結果、雨水が侵入して家の内部が腐食するリスクがあります。
そのため、定期的に外壁の点検を行い、ひび割れや剥がれ、劣化を早期に発見して修繕することが必要です。特に、外壁材として使用されるサイディングやモルタルの劣化は放置すると大規模な修繕が必要になることもあります。
防水性の高い塗装を施すことで、耐風性能を高めることができ、長期間にわたり外壁を保護できます。
・屋根のメンテナンス
屋根は風の影響を直接受ける部分であり、強風によって瓦や屋根材が飛ばされることがよくあります。瓦が飛ばされたりずれたりすると、そこから雨水が浸入し、家全体にダメージを与える可能性があります。
そのため、暴風雨の季節が始まる前に屋根の点検を行い、瓦のずれや破損がないかを確認することが重要です。特に、台風シーズン前には専門家に依頼して屋根の補修を行うと、未然に被害を防ぐことができます。また、金属屋根や軽量の屋根材を使用することで、風による飛散リスクを減らすことも効果的です。
・窓やドアの点検と補強
窓やドアは風雨に対する家の弱点ともいえる部分です。強風によって窓ガラスが割れたり、ドアが風圧で破壊されることがあります。そのため、暴風雨の際に窓やドアを保護するためにシャッターや雨戸を取り付けることが効果的です。
また、窓ガラスには強化ガラスや二重ガラスを採用することで、風圧による割れを防ぎ、耐久性を高めることができます。さらに、定期的に窓枠やドアのチェックを行い、隙間や劣化がないか確認しておくことで、家全体の防水性を保つことができます。
・長期的な防災対策
家の耐風性能を維持するためには、長期的な防災対策も考慮する必要があります。例えば、暴風雨に備えて事前に保険に加入することや、家全体の耐風性能を高めるリフォームを行うことが有効です。特に、保険に関しては、風災や水災に対応した住宅保険に加入しておくことで、万が一の被害時に経済的な負担を軽減することができます。
また、リフォームや増改築の際には、最新の建築基準に基づいた耐風設計や素材を採用することで、家全体の強度をさらに向上させることが可能です。
暴風雨が頻発する地域では、風の影響を受けにくい低層住宅を選ぶことや、周囲の環境に配慮した設計を行うことで、風害を最小限に抑えることができます。