日銀マイナス金利解除!利上げ!住宅ローンはどうなるの?
日銀がマイナス金利政策を解除した結果、住宅ローンの金利が上昇するのではないかと、心配している人もいるはずです。マイナス金利政策は住宅ローンの金利と密接な関係があり、政策の解除は金利上昇につながるおそれがあります。
しかし、マイナス金利政策を解除してから、あまり金利が変わっていないと感じている人もいるでしょう。
本記事では、マイナス金利政策が解除されたのに金利があまり上がっていない理由、今後どのように金利が変わるのかなど解説します。
マイナス金利政策とは?
マイナス金利政策とは、日銀が金融機関からお金を預かるときに金利マイナス0.1%のペナルティを与える政策です。金融機関がお金を日銀に預けた場合、預けたほうである金融機関が日銀に利息を払わなければなりません。
マイナス金利政策が導入された時期はデフレが問題化しており、お金を多く市場に流通させてインフレを発生させる必要がありました。そのため、金融機関がお金を日銀に預け過ぎないように対策する必要があり、マイナス金利政策が実行されました。
金融機関は日銀にお金を預けても利息がもらえず、むしろマイナスになってしまったため、別の方法で利益を得なければならなくなります。預けずに余ったお金の利用先として住宅ローンを積極的に消費者に貸し出すこととなり、住宅ローンの顧客獲得競争が激化しました。
マイナス金利政策解除の背景
マイナス金利政策解除の背景は、デフレからインフレに転換したことです。
近年、物価が上昇し、賃金の値上げ率も高くなっています。これらの状況を踏まえ、マイナス金利政策の必要性が薄くなったと判断し、日銀は2024年3月にマイナス金利政策の解除を発表しました。
マイナス金利政策解除が与える影響
マイナス金利政策の解除は、住宅ローンの金利の上昇につながります。
今まではマイナス金利政策により日銀にお金を預けてもペナルティが発生していたものの、解除後からは預金するだけで利息がつきます。住宅ローンのように回収が不可能にならず、収益を安定して確保できるため、日銀に預金して利益を得ようと考える金融機関があってもおかしくないでしょう。
ほかに利益を出す手段ができれば低い金利の住宅ローンを無理して貸す必要もないため、金融機関は金利を高く設定して融資するようになります。
マイナス金利解除後も変動金利が大きく上がっていない理由
本来であればマイナス金利政策が解除されて「短期プライムレート」が上昇し、変動金利も上がると予測されていました。
しかし、以下の理由により、2024年8月現在ではあまり金利の上昇がみられません。
- 日銀は追加利上げに慎重な姿勢を取っているから
- 住宅ローンの利用者を獲得しようと競争が激化しているから
- 既存借入者に大きな影響を与えてしまうから
それでは、なぜ変動金利が上昇しないのか解説します。
日銀は追加利上げに慎重な姿勢を取っているから
日銀はマイナス金利政策を解除したものの利息はまだ低く、追加利上げが何度かおこなわれるまでは変動金利の上昇は少ないと推測されます。
物価が上昇し賃金は上がっているものの、物価上昇率を差し引いた実質賃金は25ヶ月連続マイナスであり、消費者の生活が楽になっているわけではありません。このような状態で追加利上げをおこなうと、金融機関が日銀に預金する額が多くなって住宅ローンの金利が上昇してしまいます。
金利上昇が発生すると返済できなくなる人が発生する可能性も高く、日銀は追加利上げに慎重な姿勢を取っています。このことにより、金融機関が日銀に預金するメリットは少なく、住宅ローンによる利益確保がまだ必要であり、顧客獲得の競争に負けないよう金利を抑える必要があるわけです。
住宅ローンの利用者を獲得しようと競争が激化しているから
住宅ローンの重要性はまだ高く、利用者の獲得のための競争が激化して変動金利が抑えられています。
住宅ローンという金融商品の内容を理解するのが難しく、利用を検討する人は金利のみで各商品を比較します。金利でしかアピールできず、各金融機関が変動金利を低く設定しなければ競争には勝てません。
加えて人件費が少なくなるネット銀行の存在、少子高齢化による利用者の減少が重なり、より競争が激化して変動金利が低い水準のままになっています。
既存借入者に大きな影響を与えてしまうから
住宅ローンを借りている人の7割が変動金利を利用しているとされており、急激な金利上昇は返済不能者を増加させる原因となります。
実質賃金は2年近くマイナスになっており、消費者の生活は苦しい状態が続いています。そのような中、変動金利を上げてしまうと住宅ローンを返済できない人が増えてしまうでしょう。
融資したお金が戻ってこないのは金融機関にとっても大きなマイナスであり、できる限り焦げ付きを発生させたくないと考えて金利を抑えます。
今後住宅ローンの金利はどうなるのか?
今後は、固定金利も変動金利も上昇すると考えたほうがよいでしょう。
固定金利は、10年もの国債金利の影響を受けて決まります。2022年12月ごろに10年もの国債金利が0.5%、2024年4月には1.0%近くまで上がっており、それにともなって固定金利は徐々に上昇しています。
固定金利は金融機関の主力商品ではないため、国債の変動に合わせて徐々に上がっていくと考えておくべきでしょう。
また、変動金利については、短期プライムレートの影響を受けて上昇するか決まります。短期プライムレートとは、銀行が融資に問題がないと判断した信用力の高い企業に期間1年以内の融資を実行するときの金利です。
マイナス金利政策を解除した後も、短期プライムレートは変動していません。そのため、すぐに変動金利が大きく上昇するとは考えにくい状況といえます。ただし、インフレ率が収まって実質賃金がプラスに転じれば、日銀が追加利上げする可能性は高く、短期プライムレートも変動金利も上昇すると考えられます。
マイナス金利政策を解除したことを考えると、日銀は追加利上げのタイミングを狙っていると考えられるため、変動金利も上昇するという前提で考えておくとよいでしょう。
変動金利が上昇したときにできる対策
変動金利が上昇したときにできる対策は、以下のとおりです。
- ローンの借り換えを考える
- 繰上返済のために貯蓄する
- 自宅の売却を検討する
変動金利が上がると生活を圧迫するおそれもあるため、どのような対策があるのか理解しておきましょう。
ローンの借り換えを考える
変動金利が高くなって返済に困ったら、金利が低いローンへの借り換えを検討しましょう。
金利の高さは金融機関によって異なり、高いところもあれば低いところもあります。また、住宅ローンを借りた時期によっても金利の高さは異なります。そのため、借りたローンを返済し続けるよりも、金利の低い金融機関に乗り換えたほうが少ない返済額で済むかもしれません。
ただし、ローンを借り換えする際には、費用がかかる点に注意しましょう。費用を考慮すると借り換えたほうが高くなる場合もあるため、費用を加えても支払いが少なくなるのか調査することが大切です。
繰上返済のために貯蓄する
返済に余裕があるときには、繰上返済のために貯蓄しておきましょう。
住宅ローンの返済は長期に渡るため、返すのに余裕があるときもないときもあるでしょう。余裕があるからといって余剰金を使ってしまうと、金利が上がったときに返済が苦しくなります。
余剰金はなるべく貯蓄に回し、金利が上がったときに繰上返済できるようにしておきましょう。繰上返済によって住宅ローンの残額が減れば、金利が上がっても月々返済額を抑えられます。
自宅の売却を検討する
金利の上昇により返済が難しくなったと感じたら、自宅の売却を検討するのもひとつの方法です。
住宅ローンの返済が滞ってしまうと、自宅が差し押さえされて競売になってしまいます。競売が実行されると自宅から退去しなければならず、住まいを失ってしまいます。
そのような状態にならないよう、早めに自宅を売却し、生活を圧迫しない程度の賃貸物件に引越ししたほうがよいでしょう。
まとめ
日銀がマイナス金利政策を解除したことにより、住宅ローンの金利に影響が出るのではないかと懸念されています。
2024年8月現在、変動金利への影響は出ておらず、相変わらず低い水準で推移していますが追加利上げする可能性は高く、利上げするたびに変動金利が上昇するのではないかと推測されます。
住宅ローンの金利が上昇すると月々の返済、返済総額も上がってしまい、利用者にとって大きな負担となりかねません。金利が上がったときのため、対策法を理解して上昇に備えておきましょう。