住宅ローン減税制度の概要と計算方法は?手続きの方法や注意点は?

自宅を会社事務所として使っている場合、賃貸物件でも自己所有でも経費にできる項目があります。しかし、経費にするには、計上できる項目や計算方法などの知識が必要です。

正しい知識を得て経費計上し、所得税を節税していきましょう。

本記事では、自宅を会社事務所にしている場合の経費を、賃貸物件と自己所有物件の場合に分け、経費になる項目を紹介します。賃貸物件と自己所有物件の経費についての注意点も解説していますので、きちんと経費を計上したいと考えている人はぜひ参考にしてください。

住宅ローン減税とは

住宅ローン減税とは、住宅ローン控除とも呼ばれ、住宅ローンの年末残高に応じて所得税の控除を受けられる制度です。

所得税を控除しきれなかった場合、控除できなかった分が翌年度の住民税から差し引かれます。

新築や中古の購入時だけでなく、リフォームのために借りた住宅ローンでも制度が適用されます。ただし、住宅ローン減税を利用するには、多くの条件をクリアしなければなりません。

住宅ローン減税が適用される物件の条件

住宅ローン減税は新築、中古、リフォームでも利用できますが、それぞれで利用できる条件が変わります。

ここでは以下のとおり、物件ごとに住宅ローン減税が適用される条件を紹介します。

  • 新築住宅
  • 買取再販住宅
  • 中古住宅
  • リフォーム

それぞれの条件を理解し、住宅ローン減税の手続きを進めましょう。

新築住宅の場合

新築住宅の場合、次の条件を満たす必要があります。

  1. 減税を受ける人が住宅の引渡し日か工事の完了から6ヶ月以内に居住する
  2. 住宅ローン減税を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下である
  3. 対象の住宅の床面積が50㎡以上かつ床面積の2分の1以上が自身の居住用である(ただし、合計所得金額1,000万円以下、かつ2023年末までに建築確認を受けた新築住宅の場合、住宅の床面積が40㎡以上でも適用される)
  4. 対象の住宅に対し住宅ローンの残期間が10年以上ある
  5. 居住用にした年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例といった適用を受けていない

住宅ローン減税の条件は複雑であるため、内容が理解できないときには不動産会社か税理士からアドバイスを受けましょう。

買取再販住宅の場合

買取再販住宅の場合、次の条件を満たす必要があります。

  1. 宅地建物取引業者(不動産会社)から住宅を取得する
  2. 宅地建物取引業者が2年以内に住宅を取得してリフォームをおこない再度販売した住宅
  3. 対象の住宅を取得した時点で新築日から10年経過している住宅
  4. 建物価格に対してリフォーム費用が20%以上を占める住宅
  5. 大規模修繕や耐震基準に適合するための工事やバリアフリー改修、省エネ改修など対象となる工事がおこなわれる住宅

買取再販住宅の場合、購入者ではわからない内容を含むため、購入するときには売主の不動産会社に買取再販住宅の条件を満たしているか調査しておきましょう。

なお、買取再販住宅とは、宅地建物取引業者が既存住宅を買取ったうえで、リフォームして再販売した住宅です。

中古住宅の場合

中古住宅の場合は新築住宅の条件に加え、次のどちらかを満たす必要があります。

  1. 1982年1月1日以降に建築された住宅
  2. 現行法令の耐震基準に適合している住宅

1981年以前の中古住宅を個人から購入する場合、一定の耐震補強工事が終わっている建物しか住宅ローン減税は適用されません。住宅ローン減税を受けたいと考えるなら、建物の築年数と耐震補強の有無は必ず聞いておきましょう。

リフォームの場合

リフォームの場合、次の条件を満たす必要があります。

  1. 増改築や建築基準法に規定する大規模な修繕または大規模な模様替えの工事
  2. マンションの専有部分の床、階段または壁の半分以上に実施する一定の修繕・模様替えの工事
  3. 家屋・マンションの専有部分のうち、リビング・キッチン・浴室・トイレ・洗面所・納戸・玄関か廊下の一室の床、またはすべての壁に実施する修繕・模様替えの工事
  4. 現行法令に対応する耐震改修工事
  5. 一定のバリアフリー改修工事
  6. 一定の省エネ改修工事
  7. 1回の工事金額が100万円を超える

住宅ローン減税のリフォームについては、適用される工事の内容が詳細に決められています。対象となる工事かどうかは、リフォーム会社に聞いてみましょう。

住宅ローン減税が適用される融資の条件

住宅ローン減税を利用するには、物件以外にも次のとおり、融資の条件も満たす必要があります。

  1. 自己居住用の住宅とその敷地を取得するための借入で、建物と敷地を同時一体として借りること
  2. 住宅ローンは次のいずれかから借りること

a.銀行

b.農協・信用金庫・信用組合

c.住宅金融支援機構

d.地方公共団体

e.各種公務員共済組合

f.勤務先

(勤務先から借りる場合、市場金利を換算して定められた0.2%以上の金利であること)

住宅ローン減税は担保にした物件や、借り先にも条件があります。物件の条件だけ満たしていても利用できないため注意しましょう。

住宅ローン減税の計算方法

減税される所得税額は、次のように計算します。

住宅ローンの年末残高 × 0.7% = 年間の所得税から控除される額

たとえば、住宅ローンの年末残高が2,000万円だった場合、0.7%を乗じた金額である14万円が所得税から控除されます。

ただし、住宅ローン減税には、次の表のように年末残高の上限額と控除期間が定められています。

住宅新旧等 住宅環境性能等 年末残高の上限額 控除期間 控除割合
新築住宅
買取再販
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
4,500万円 13年間 0.7%
ZEH水準省エネ住宅 3,500万円 13年間
省エネ基準適合住宅 3,000万円 13年間
その他住宅 2,000万円 10年間
既存住宅 認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円 10年間
その他住宅 2,000万円 10年間
リフォーム 規定なし 2,000万円 10年間

新築の認定長期優良住宅を購入した場合、年末残高が6,000万円あったとしても計算上は4,500万円までです。

新築の認定長期優良住宅か認定炭素住宅を購入すれば、最大で409万5,000円減税されます。

※計算式:4,500万円×0.7%×13年=409.5万円

住宅ローン減税の手続き方法

住宅ローン減税の手続き方法は、1年目と2年目以降で異なります。

ここからは、1年目と2年目以降の手続き方法を解説します。

1年目の手続き方法

住宅ローン減税の1年目は、確定申告で手続きしなければなりません。

確定申告は不動産を購入・建築した年の翌年2月16日~3月15日におこないます。

確定申告で必要な書類は、次のとおりです。

  • 確定申告書
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅ローンの借入残高証明書
  • 勤務先の源泉徴収票
  • 土地建物の登記簿謄本
  • 本人確認書類

確定申告書や計算明細書を作成するには、多くの項目を計算しなければなりません。もし自身で進めるのが難しいと感じるなら、不動産会社や税理士のアドバイスを聞きつつ作成しましょう。

2年目以降の手続き方法

2年目以降の住宅ローン減税の手続きは、会社が年末調整時に行ってくれます。

1年目の確定申告後に税務署から送られてきた書類と、銀行から届いた残高証明書を会社に提出します。

なお、個人事業主やフリーランスのような給与所得者以外の人は、2年目以降も確定申告で住宅ローン減税の手続きをしなければなりません。

住宅ローン減税を利用する際の注意点

住宅ローン減税を利用する際の注意点は、次のとおりです。

  • 住宅ローン減税の申請には時効がある
  • 1年目の申請は自分でおこなう
  • 返済期間が10年を切ると利用できない

住宅ローン減税の注意点を理解し、控除の額を減らさないようにしましょう。

住宅ローン減税の申請には時効がある

住宅ローン減税の初回申請である確定申告を忘れたとしても、5年以内であれば還付申告できますが、5年を超えてしまうと、還付を受ける権利が消滅します。

なお、確定申告したにもかかわらず、住宅ローン減税の適用申請を同時にしなかった場合は原則、住宅ローン減税が利用できなくなります。確定申告したから自動的に住宅ローン減税が受けられるのではなく、適用申請も同時におこなう必要があると覚えておきましょう。

1年目の申請は自分でおこなう

住宅ローン減税の手続きは、会社がおこなうと思い込んでいる人がいます。しかし、給与所得者だとしても、1年目の申請は自分で確定申告しなければなりません。

会社がおこなってくれると思い込んでいると、1回目の確定申告の期間が過ぎても気付かないおそれがあります。住宅ローン減税の所得税控除は金額が大きいため、忘れずに確定申告しましょう。

返済期間が10年を切ると利用できない

住宅ローン減税は、住宅ローンの借入期間が10年を切ると利用できなくなります。

たとえば、15年返済で住宅ローンを借りた場合、5年しか住宅ローン減税を受けられません。多額の借り入れになる場合、24年以上の返済期間を設定しておくべきでしょう。24年で設定すれば、住宅ローン減税の最大控除年数13年をカバーできます。

まとめ

住宅ローン減税は、住宅ローンの年末残高に応じた金額を所得税から控除できる制度です。

利用するには多くの条件をクリアしなければなりませんが、最大で409万5,000円もの所得税の控除が受けられます。

1回目の住宅ローン減税の手続きのみ確定申告が必要で、2年目以降は会社の年末調整で手続きする点には注意が必要です。

不動産を取得すると多くの費用がかかるため、どのような条件をクリアすればいいのか理解して所得税を控除していきましょう。