自宅を会社事務所としている場合のローンや家賃の経費について

自宅を会社事務所として使っている場合、賃貸物件でも自己所有でも経費にできる項目があります。しかし、経費にするには、計上できる項目や計算方法などの知識が必要です。

正しい知識を得て経費計上し、所得税を節税していきましょう。

本記事では、自宅を会社事務所にしている場合の経費を、賃貸物件と自己所有物件の場合に分け、経費になる項目を紹介します。賃貸物件と自己所有物件の経費についての注意点も解説していますので、きちんと経費を計上したいと考えている人はぜひ参考にしてください。

自宅が賃貸物件の場合

自宅が賃貸物件の場合、次のように経費を計上します。

  • 宅の面積と会社事務所で使っている面積を調べる
  • 調べた面積を使って経費を計算する

それでは、具体的にどのように計算するのかみていきましょう。

自宅の面積と会社事務所で使っている面積を調べる

自宅の面積は、賃貸借契約書の中に記載されています。

次の会社事務所で使っている面積を調べます。たとえば、居室の一室だけを事務所にしているなら、その居室だけが会社事務所の面積です。

各部屋の面積は賃貸借契約書に記載されていないため、自分で調べなければなりません。もし賃貸物件のパンフレットが残っていれば、各部屋の帖数(畳数)は調べられます。しかし、洗面所やキッチンの面積は記載されていない可能性が高く、洗面所などを会社事務所として使っている場合はメジャーを使って自分で測る必要があります。

調べた面積を使って経費を計算する

面積がわかったら、次の計算式を使って経費を計算します。

家賃 ×(会社事務所の面積 ÷ 賃貸物件全体の面積)= 経費

次の例を使い、具体的に経費がいくらになるのか計算します。

  • 家賃:15万円
  • 賃貸物件全体の面積:50㎡
  • 会社事務所の面積:20㎡

計算式

15万円 ×(20㎡ ÷ 50㎡)= 6万円(経費)

つまり、このケースだと家賃15万円のうち、経費計上できるのは6万円です。

賃貸物件で経費計上するときの注意点

賃貸物件で経費計上するときの注意点は、次のとおりです。

  • 生活スペースと会社事務所を共有している部分は全額経費にできない
  • 管理費や修繕積立金も経費精算する
  • 駐車場の按分は家賃と違う
  • 同一生計の親族が所有している家賃経費は認められない

経費計上の注意点を理解し、正しい知識を身に着けましょう。

生活スペースと会社事務所を共有している部分は全額経費にできない

洗面所やトイレのように、生活スペースと会社事務所が共有している部分は全額経費にできません。

共有部分に関しては、次の計算式で経費計上できる面積を計算します。

共用部分の面積 × 会社事務所の面積 ÷(賃貸物件全体の面積 – 共用部分の面積)= 経費計上できる共用部分の面積

それでは、次の例を使って経費計上できる共用部分の面積を計算しましょう。

  • 賃貸物件全体の面積:50㎡
  • 会社事務所の面積:20㎡
  • 共有部分の面積:10㎡

計算式

10㎡ × 20㎡ ÷(50㎡ – 10㎡)= 5㎡(経費計上できる共用部分の面積)

つまり、このケースだと共用部分の面積10㎡のうち、経費計上できる面積は5㎡です。

管理費や修繕積立金も経費精算する

自宅を借りる際に、次の費用を払っているなら経費に計上できます。

  • 管理費
  • 修繕積立金
  • 契約更新料
  • 火災保険料

ただし、上記の費用を払っていても全額経費にはできず、家賃と同様に事業按分した分だけ計上できます。計算方法については、家賃と同じです。

駐車場の按分は家賃と違う

月極駐車場を借りている場合も経費にできますが、駐車場料金の按分方法は家賃と違います。

月極の駐車場料金は、事業として車両を使った日数や時間などで金額を按分します。

なお、青色申告と白色申告では、業務使用分によって経費にできるかどうかが変わるため注意しましょう。

青色申告の場合は業務使用分に制限はないものの、白色申告の場合は業務使用分が50%を超えないと経費計上できません。

同一生計の親族が所有している家賃経費は認められない

賃貸物件の大家さんが、同一生計の親族である場合、家賃を払っていても経費としては認められません。

たとえば、父親と同一生計として暮らしており、父親名義の家を賃貸借して自宅兼事務所にする場合です。この場合、父親から建物を借りるため、賃料を払わなければなりません。しかし、払った賃料は結局、同一生計の人の財布に入ってしまい、生計内で金額が増減しないため経費として認められません。

親族から建物を借りていても生計が別になっていれば、事業按分したうえで経費計上するのは可能です。

自宅が自己所有物件の場合

自宅が自己所有物件の場合、次のように経費を計上します。

  • 建物の構造を調べる
  • 建物の減価償却費を計算する
  • 減価償却費を事業按分する

それでは、自己所有物件の経費計上についてみていきましょう。

建物の構造を調べる

まずは自己所有物件の建物構造を調べます。

建物構造とは、木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造などです。建物構造は売買契約書、重要事項説明書、建築請負書に記載されています。

建物の減価償却費を計算する

建物構造が調べたら、建物の減価償却費を計算します。

建物の減価償却費を計算するには、法定耐用年数と償却率を理解しておく必要があります。それぞれの建物構造の法定耐用年数と償却率は、次の表のとおりです。

建物の構造等 法定耐用年数 償却率
木造 22年 0.046
軽量鉄骨
(骨格材3mm以下)
19年 0.037
軽量鉄骨
(骨格材3mm超4mm以下)
27年 0.052
軽量鉄骨
(骨格材4mm超)
34年 0.03
鉄筋コンクリート造 47年 0.022

建物の減価償却費は、表の数字を使って次のように計算します。

建物の取得費用(購入・建築費用) × 償却率 = 減価償却費

それでは、次の例を使って減価償却費を計算しましょう。

  • 建物の取得費用:5,000万円
  • 建物の構造:鉄筋コンクリート造(償却率022)

計算式

5,000万円 × 0.022 = 110万円(減価償却費)

そして、減価償却費は法定耐用年数だけ経費計上できるため、47年間110万円の経費計上ができます。

ただし、全額経費計上できるわけではなく、事業按分しなければなりません。

また、上記の計算は新築の建物を取得した場合の計算であり、中古を取得した場合の計算方法とは違います。中古の計算は複雑であるため、税理士に計算方法を聞きましょう。

減価償却費を事業按分する

減価償却費を計算したら、事業按分します。

事業按分の計算方法は、賃貸物件の家賃と同じ計算方法です。

たとえば、減価償却費が50万円、会社事務所の面積が自宅の面積の5分の1だった場合、経費計上できるのは10万円です。

自己所有物件で経費計上するときの注意点

自己所有物件で経費計上するときの注意点は、次のとおりです。

  • 住宅ローン減税の控除額が減ってしまう
  • 固定資産税や住宅ローン金利なども経費にできる

賃貸物件の自己所有物件とでは注意点が異なります。違いを理解し、経費を計上しましょう。

住宅ローン減税の控除額が減ってしまう

住宅ローン減税は、会社事務所の面積が増えるほど控除できる金額が減ります。

また、会社事務所の面積が自宅の面積の50%を超えると、住宅ローン減税自体が受けられなくなります。会社事務所の面積が大きくなるほど減価償却費は増えるものの、住宅ローン減税の控除額が減るので注意しましょう。

なお、会社事務所の面積が自宅の面積の10%未満であれば、住宅ローン減税の控除額を満額受けられます。

固定資産税や住宅ローン金利なども経費にできる

自宅が自己所有物件だった場合、減価償却費以外にも次の費用が経費として認められます。

  • 固定資産税
  • 住宅ローンの利息
  • 火災保険料

ただし、上記の費用がすべて経費になるのではなく、事業按分が必要である点には注意しましょう。

また、住宅ローンについて経費計上できるのは返済額ではなく、利息の部分のみです。たとえば、年間の住宅ローン返済額が100万円で、その中の10万円が利息だった場合、経費になるのは10万円の利息を事業按分した金額です。

まとめ

自宅を会社事務所とする場合、賃貸物件と自己所有物件では経費にできる項目が違います。

賃貸物件の場合、家賃や管理費などを事業に使用している割合で按分できます。一方、自己所有物件なら、建物の減価償却費や固定資産税、住宅ローンの利息などの計上が可能です。

ただし、賃貸の場合も、自己所有の場合も計上時に気を付けるべき点があります。注意点を守って適切な経費計上を心がけ、所得税を節税していきましょう。