外観だけでは分かりづらい土地の地盤調査と安全性
「家を建築するときの地盤調査って必要なの?」「地盤を強くする方法はないの?」というように、家の地盤について気にしている人は多いことでしょう。
家を建てる地盤は非常に大切であり、強い地盤に建築しないと地震の被害が大きくなってしまいます。
本記事では地盤調査の重要性や地盤の種類、地盤改良の方法や費用について解説します。住宅を建てるときの地盤について気になるという人は、ぜひ参考にしてください。
地盤は建物の安全性に大きくかかわる
地盤調査は、住宅の安全性を大きく左右する調査です。
住宅は地盤の状態によって地震被害の度合いが変わってきます。地盤が弱いところに住宅を建築し大震災の被害を受けてしまうと、住宅が大きく揺れてしまって倒壊するおそれが高くなります。反面、地盤の強いところに建築すると、地震の揺れが軽減されて被害を軽減することが可能です。
2024年の元旦に発生した、令和6年能登半島地震の被害は記憶に新しいと思います。また、2023年には日本国内で震度4以上の地震が41回も発生しています。
日本は大地震が起きる可能性が高く、中程度の地震も多く発生することもあり、地盤の強い場所に住宅を建築して地震被害を抑えなければなりません。
地盤調査をおこなえば地盤の強さがわかり、弱い場合には適切な地盤改良工事が可能になるため、住宅建築する際には必ず地盤調査をおこないます。
地盤調査の種類と方法
地盤調査の種類と方法は、次のとおりです。
- スウェーデン式サウンディング試験
- ボーリング調査
- 表面波探査法
地盤調査の方法はいくつかあり、それぞれに特徴があります。どの方法で調査するのかは地盤調査会社に任せますが、住宅建築する際にはどのような方法があるかだけでも理解しておきましょう。
スウェーデン式サウンディング試験
スウェーデン式サウンディング試験とは、鉄の棒にドリルのような形状をした部品を取り付けて地中を貫通させ、ドリルの回転数などから地盤の強弱を測る方法です。
スウェーデン式サウンディング試験は地盤調査の中でももっとも利用されている方法であり、調査費用が安く短期間で地盤を調査できます。
スウェーデン式サウンディング試験は調査スペースもあまり必要なく、1.5メートル四方の場所があれば調査可能です。調査場所は土地の中央と4隅の計5カ所を測ります。
ただし、スウェーデン式サウンディング試験は特定の地盤には使えない、地盤を掘削する音で判断し調査結果があいまいになるなどのデメリットもあります。
ボーリング調査
ボーリング調査とは、地中のボーリングロッド(サンプラー)という円筒型の鉄の筒を打ち込んで地盤の強弱を調べる方法です。
ボーリングロッドを地中に埋め込み、ボーリングロッドに対して一定の高さからハンマーを下ろして筒を地中に打ち付けます。一定の深さに達するまで何回ハンマーを打ち下ろしたかで、地盤の強さがわかるわけです。
また、ボーリングロッドは円筒状になっているため、打ち込みするごとに筒の中に土が入ります。筒の中に入った土を調べることで、地盤の土質まで詳細に分析することが可能です。
ただし、ボーリング調査には大きめの機材が必要であり、ボーリングロッドを打ち込む前には人力で試掘しなければなりません。機材や試掘には費用がかかるため、ボーリング調査は比較的高額になる地盤調査になってしまいます。
表面波探査法
表面波探査法とは、振動を発生させる起振器と振動をキャッチする受振器を用いて地盤の強度を測る調査方法です。
振動の伝わり具合で地盤の強弱を調べられ、地中に埋設物や空洞があると振動の周波数が変わるため地中に何があるのかわかりやすい方法です。
また、スウェーデン式サウンディング試験やボーリング調査は地中に穴を空けなければ調査できず、地上の工作物を解体・撤去しなければなりません。しかし、表面波探査法は振動で地盤を調査することで、地上にあるアスファルトや砂利などを撤去しなくても調査ができます。
ただし、表面波探査法はややコストが高く、地中10m以上の調査精度が落ちるというデメリットがあります。軟弱地盤が深くまであると想定される場合、表面波探査法は使えません。
地盤の種類と特性
地盤の種類は、次のとおりです。
- 岩盤
- 洪積層
- 沖積層
- 人工地盤
地盤は大きく分けると4つありそれぞれに特性があるため、建築する住宅がどのような地盤の上に建っているのか確認しておきましょう。
岩盤
岩盤とは、火成岩や堆積岩、変成岩などで形成された地盤を指します。
岩盤には軟岩と硬岩があります。軟岩と聞くと弱い地盤なのかと思ってしまう人もいるかもしれません。しかし、軟岩は2,300万円以降に形成された地形であり、火成岩や堆積岩など固い岩で構成されているため、宅地として問題なく使用できる地盤です。
洪積層
洪積層(こうせきそう)とは、250万~2万年前に形成された礫層・砂層、火山灰が堆積してできたローム層などで形成された地盤です。
洪積層は固い地盤であるため宅地に向いているとされ、主に台地で多くみられます。
洪積層が宅地に向いている理由は、沖積層に比べて地震や洪水の被害に強く、比較的液状化の影響も受けにくい地盤だからです。
また、地盤が硬く振動の振れ幅が抑えられて、地震の揺れが小さくなる傾向にあります。
沖積層
沖積層(ちゅうせきそう)とは、2万年前から現代までに堆積した土砂で形成された地盤です。
沖積層は礫層・砂層・粘土層・腐植土層の4つに分けられ、礫層や硬い砂層は宅地に向いている地盤ですが、ゆるい砂層・粘土層・腐植土層は宅地に向いていません。
ゆるい砂層は地下水が上がってきやすく、液状化現象の被害を受けやすくなってしまいます。また、粘土層や腐植土層は地盤がゆるく不同沈下などの被害が起きやすい地盤です。
人工地盤
人口地盤とは、人工的に作られた埋立地や盛土をした地盤です。
人工地盤は災害に弱く、宅地には不向きです。埋立地の場合は水が上がりやすく液状化の影響を受けたり、土地が固まっておらず揺れが大きくなってしまったりします。また、盛土をした土地は、すでに形成されている自然の地盤の上に土を乗せた形となっており、自然の地盤と人工的な地盤との境目がくっついておらず地すべりを発生させるおそれがあります。
また、自然の硬い地盤は沈まず、人工のやわらかい地盤は沈みやすくなるため、両方の地盤に乗った場所に建物を建築すると不同沈下に原因にもなってしまうため注意しなければなりません。
地盤改良の方法と効果
地盤改良の方法は、次のとおりです。
- 表層改良
- 柱状改良
- 小口径鋼管杭
地盤の強さによって、どの地盤改良を実施するのか変わります。どのような方法で地盤改良するのか、各地盤改良の効果はどのようなものなのかみていきましょう。
表層改良
表層改良とは、建物を建築する場所の浅い部分の地盤をセメント系の固化材で固める方法です。
軟弱な地盤が2メートル程度であれば、表層改良で対応できます。表層改良はほかの地盤改良よりも安価で、工期も短く済みます。
柱状改良
柱状改良とは、60センチほどの穴を空けて、穴の中に固化材を混ぜて作った円柱状の改良杭によって建物を支える方法です。
柱状改良は、軟弱地盤が2メートル~8メートルの場合に利用されます。
建築する建物の重量によって柱の本数を追加して対応するため、比較的大きな建物や重量のある建物にも対応できます。
小口径鋼管杭
小口径鋼管杭とは、口径が101.6mm~267.4mmの鋼管杭を、地中に存在している支持層まで打ち込むことで建物の重量を支える方法です。
小口径鋼管杭は柱状改良でも対応できないほど、軟弱地盤が厚いときに利用されます。
小口径鋼管杭は杭回転させつつ打ち込んでいくため、周辺に振動を発生させにくく、比較的近隣の建物に影響を与えにくい方法です。
地盤調査と地盤改良の費用
地盤調査の費用は、次のとおりです。
- スウェーデン式サウンディング試験:5万円程度
- ボーリング調査:25〜30万円程度
- 表面波探査法:8万円~12万円程度
地盤改良の費用は、次のとおりです。
- 表層改良:30~50万円程度
- 柱状改良:50~80万円程度
- 小口径鋼管杭:100~180万円程度
ただし、地盤改良の費用については建築するメーカーなどによって変動するためあくまで参考としてください。詳細は建物を建築するメーカーにお問い合わせください。
まとめ
地盤は建物の安全性に大きくかかわるため、地盤の内容や地盤改良について知っておかなければなりません。
地盤は大きく分けて4種類あり、地盤の強さに応じた地盤改良が必要になります。地盤が強いかどうかを判定するには地盤調査が必須であり、調査には費用がかかります。
また、地盤改良の費用は改良方法によって高額になるため、あらかじめ地盤が強いかどうかを調べておいたほうがいいでしょう。調べるのには費用がかかるものの、後々高額な改良工事費用を請求されても支払いが厳しいということになりかねません。
地盤調査と地盤改良の内容を理解し、安心安全な住宅を建築していきましょう。