2024年度の予算編成で検討中⁉子どもが多い世帯ほど住宅ローンの金利がお得なの?

2023年現在、2024年度の予算編成で、子どものいる世帯がフラット35を利用して住宅を購入した際に、住宅ローン金利の引き下げをおこなうという制度を検討しています。

少子化対策として実施される予定の制度ですが、果たして消費者にとってメリットがある制度なのでしょうか。

本記事では2024年度の予算編成で検討中である、子どものいる世帯がフラット35を利用した場合の金利引き下げについて解説していきます。

マイホーム購入を検討している子どものいるご家庭の人は、ぜひ記事を参考に制度を利用するか検討ください。

国は少子化対策の一環として住宅ローン金利引き下げを検討

国は少子化対策の一環として、2023年6月に「こども未来戦略方針」を閣議決定しました。

こども未来戦略方針の中で「こども・子育て支援加速化プラン」が示され、児童手当の拡充など3兆円もの予算が盛り込まれました。そして、こども・子育て支援加速化プランには、フラット35の金利引き下げも検討されており、2024年度から実施される予定です。

フラット35の金利引き下げ制度について概要がわかってきており、子どものいる家庭の住宅購入促進につながるのか注目されています。

住宅ローン金利の引き下げで検討されている内容

こども・子育て支援加速化プランで検討されている、フラット35の住宅ローン金利引き下げの具体的な内容は次のとおりです。

  • フラット35の全期間固定型を利用し住宅ローンを借りた場合、子ども1人につき適用金利を25%引き下げる
  • 子どもの数は4人を最大とし、金利は最大で0%優遇される
  • 金利が引き下げられるのは借入から5年間

フラット35を利用した金利引き下げについては、子どもの数や優遇される期間に制限を設けています。しかし、家庭の所得には制限を設けていないことから、純粋に子どもがいる家庭であれば制度を利用できる予定です。

また、フラット35には「地域連携型」という、地方自治体の支援による金利優遇があります。地域連携型は購入する不動産の所在によっては利用できませんが、国の主導する子どもの人数での金利引き下げ制度には、購入する不動産の所在地による制限も設定されない見込みです。

住宅ローン金利の引き下げの適用を受けられる人

フラット35の住宅ローン金利の引き下げを受けられる人は、次のとおりです。

  • 子どもがいる世帯(事実婚やひとり親なども対象)
  • 子どもがいない世帯で夫婦のどちらかが40歳未満(カップルや事実婚なども対象)

上記のように子どもがいない世帯でも、一定条件を満たせば金利が優遇されます。子どもがいない世帯の条件を満たした人は、0.25%の金利優遇を受けられます。

このようにフラット35の住宅ローン金利引き下げ制度は、すでに子どものいる家庭だけではなく、将来子どもができる可能性のある世帯にも適用範囲を広げているわけです。

制度の適用を受けられる人が多ければ、その分、制度を実施した効果は大きいといえます。

検討されている住宅ローン金利の引き下げは本当にお得なの?

制度の対象となる世帯は多いものの、本当にフラット35の金利引き下げはお得なのかが気になるところです。

ここからは、検討されているフラット35の金利引き下げ制度が本当にお得なのか解説していきます。

フラット35の金利引き下げ制度はお得とはいえない

結論からいうと、フラット35の金利引き下げ制度は、本当にお得とはいえません。

フラット35自体、若い夫婦が利用するのに適していない金融商品であるため、金利が少し引き下げられた程度ではお得にはなりません。

フラット35の特徴として、長期間金利が固定されるため借り入れから返済まで同じ金額を返済すること、金利が変動金利に比べかなり高いというものがあります。一見、返済額がずっと変わらないというのはメリットに思えますが、金利が高いこともあって長期間大きな返済額を一定で払うだけになってしまいます。

若い夫婦は高いお金を準備するのが難しいため、そもそもフラット35の利用のハードルが高いのです。そして、現在検討されている金利優遇の最大幅である1%を利用できたとしても、変動金利の金利には遠く及びません。それであれば「最初から変動金利で借りたほうがよい」となってしまいます。

変動金利の特性

「でも、変動金利は金利が大きく上がることもあるから危険ではないの?」と思う人もいると思います。確かに変動金利には金利が大きく変わる可能性があるというデメリットもあります。

しかし、変動金利は金利が上昇したとしても、一定期間、返済額を据え置くという金融機関がほとんどです。急激な金利変化が起きてすぐに返済額を変えてしまうと、滞納者が増えてしまいます。滞納者が増えるのを防止するために金利が急激に上昇しても、一定期間、段階的に返済金額を上げていくわけです。

つまり、変動金利の金利は「急に変動しない」のです。

かりに変動したとしても、変動金利がフラット35年の全期間固定金利まで上昇する可能性は非常に低いでしょう。昨今、変動金利が上がってくるかもしれないといわれていますが、2023年11月現在、「三井住友銀行の住宅ローン変動金利は0.475%」であり、「フラット35 の全期間固定金利は低くて1.960%」です。フラット35の金利は取り扱う金融機関によって異なります。取り扱う金融機関の中で一番低いのが金利1.960%であり、最大値は金利3.530%です。バブル期のような好景気にならない限りは、変動金利がこのような高い金利なる可能性は低いでしょう。

返済金額のシミュレーション

上記では例として三井住友銀行とフラット35の金利比較をしましたが、説明した金利で借り続けた場合、どのくらいの金額差がでるのでしょうか。

借入希望金額3,000万円、住宅ローン35年返済、三井住友銀行の変動金利0.475%、フラット35金利1.960%で計算してみましょう。

【変動金利0.475%の場合】

  • 返済総額:32,568,900円
  • 利息:2,568,900円
  • 月々返済金額:77,545円(ボーナス支払いなし)

【固定金利1.960%の場合】

  • 返済総額:41,480,880円
  • 利息:11,480,880円
  • 月々返済金額:98,764円(ボーナス支払いなし)

計算のように利息の差が約900万円、月々返済額が約2万円の差が付きます。かりにフラット35の金利引き下げで1.0%下がったとしても、5年間しか優遇されないためそこまで差は縮まりません。

若い夫婦は子どもの成長に備え、進学したときのお金や病気なったときなどのお金を貯蓄する必要があります。それにもかかわらず返済額が大きくなってしまうのでは、むしろ子育てに逆効果なのではないかという疑問さえ浮かんでしまいます。

フラット35の金利引き下げ制度を利用するのに適した人

フラット35の金利引き下げ制度は、一般的な若い夫婦の世帯にはあっていません。

しかし、変動金利で借りるよりも固定金利で借りるほうがあっている人もいます。もしフラット35の金利引き下げ制度を利用するのであれば、自分が固定金利を選択したほうがよい人に該当しているか確認しておくことが大切です。

フラット35の金利引き下げ制度を利用するのに適した人は、次のとおりです。

  • 子どもがおらずライフスタイルの変化が起きにくい人
  • 頭金を多く出せ借入金額に対する利息が少なくできる人
  • 家計の安定を第一に考える人

あっている人を見てみるとわかるとおり、若い夫婦の世帯にはあまり当てはまらない条件です。若い夫婦には子どもがいるケースも多く、多額の頭金を出せる人は多くありません。このことからもフラット35の金利引き下げ制度は、子育て支援に有用なのか疑問に感じてしまいます。

まとめ

2023年現在、国はさまざまな子育て支援制度を実行しています。その一環として子どもがいる世帯がフラット35を利用する場合、金利を引き下げるという制度が検討されています。

住宅ローンの金利が引き下げられるのは消費者にとってありがたい話ですが、引き下げられたからといって、本当にお得かどうかは別の話ということを覚えておく必要があります。

自分が制度にあった状況下にあるのであれば、積極的にフラット35の金利引き下げ制度を利用するとよいでしょう。しかし、大半の子育て世帯には得にならないはずであるため、制度の利用を検討している人は、不動産会社や金融機関に相談したうえで判断することをおすすめします。