夏でも快適な家づくりのポイントとは?断熱性と通風を重視すべき理由

夏は気温や湿度が高くなりやすく、冬のように着込む服を増やすなど簡単な対処ができないため、対策をしなければ自宅が不快な空間になりやすい季節です。

また単に不快度が増すというだけではなく、対策をしなければ健康面や経済面でいくつかのリスクを抱えることにもつながります。

高温多湿な夏に備える方法はいくつかありますが、これから家づくりを始めるのであれば「断熱性・通風の確保」について最優先で考えることを推奨します。本記事を通じて、夏でも快適な家を目指すことの重要性と、その具体的な方法について確認していきましょう。

夏でも快適な家づくりを目指す目的

夏を快適に過ごすためには、エアコンの設置や扇風機の導入など複数の選択肢がありますが、家づくりの段階から力を入れれば以下の点でより大きなメリットがあります。

  • 健康面や生活の快適度
  • 省エネルギーと環境への配慮

それぞれ順番に解説します。

健康面や生活の快適性

高温多湿になりやすい日本の夏は、脱水症状や夏バテなど健康のリスクもつきものです。

また、さまざまなメディアでもいわれていますが、昨今では年間を通じた平均気温が年々上昇する傾向が見られます。

出典:気象庁「日本の年平均気温

最高気温が35℃以上となる日を「猛暑日」と呼びますが、たとえば東京では2010年以降、年間を通しての猛暑日が10日を超える年も珍しくなくなってきました。

夜間は冷房をつけなければ入眠しにくい一方、温度設定を下げすぎれば冷えすぎによる体調不良を招くため、睡眠の質が悪くなりやすい季節ともいえるでしょう。

ここまでに挙げたような「健康上のリスク・生活の快適度」を改善することが、夏でも快適な家を目指す理由の1つです。

省エネルギーと環境への配慮

健康や快適度とは別の観点として、家づくりにおいては「エネルギー消費量・環境への負担」にも意識を向けることが求められています。

一見すると私たち個人の生活には無関係なことに思えますが、とくに省エネルギーに配慮した家づくりは経済面で直接的なメリットがあります。

夏季の快適性を高める家づくりでは、一般的に断熱性と通風の確保が重要とされますが、これらを意識して家を設計することで冷房機器を効率的に運用できます。いいかえると、ほどほどの風量や設定温度で冷房機器を稼働させても、快適に過ごせるようになるのです。

その結果、過剰に強い設定で冷房をつけるケースよりも電力消費量を抑えられ、月々の電気代を節約できます。昨今、多くの電力会社で徐々に電気料金の単価が上昇しているため、今後も光熱費の負担が増えることを考えれば、自宅の省エネルギー化は合理的だと判断できるはずです。

また、私たち個人にはなかなか体感できないことですが、省エネルギー化を目指せば資源の無駄遣いを減らし、地球温暖化の進行を遅らせることができるともいわれています。

「いまの生活」だけを見れば私たちには無関係な話題に思えますが、私たちの世代が子どもや孫の世代に残してしまう問題を減らす……という観点で、省エネルギー化は有意義な取り組みだといえるでしょう。

いよいよここからは、家づくりの段階で意識したい以下の2点について解説していきます。

  • 断熱性
  • 通風

「断熱性が重要なのは知っているけれど、具体的にどんな基準で考えれば良いのか分からない」や「通風はどうこだわるべきなのか分からない」といった方でも、本記事を最後まで読み進めていただくことで重要なポイントをご理解いただけます。

まずは家づくりにおける断熱性の大切さについて確認していきましょう。

夏に強い家づくりにおける断熱材の重要性

断熱性に優れた家と聞けば「冬は暖かい一方、夏は蒸し暑くなる」というイメージを抱きがちですが、実は断熱性は夏場における屋内の快適性にも関係します。

十分な断熱性能を獲得できる「断熱材の厚さ・種類」については地域により差があるため、その都度プロの意見を聞くことをおすすめしますが、事前に知っておいた方が良い基礎知識や断熱材選びに共通する評価基準について解説します。

断熱材とは?主な役割と効果

断熱材は、家の内部と外部の熱移動を抑えるための材料です。

建物の壁や屋根に断熱材を使用することで、夏は室内の空気が屋外の熱気で暖まることを防ぎ、冬は室内の空気が屋外の寒気で冷えることを防ぎます。結果として、一年を通じて快適な室内環境を維持することができます。

断熱材には特性が異なる複数の種類があり、施工箇所に応じて使い分けることが一般的です。

たとえば、ウレタンフォームは薄くても高い断熱性能を発揮し、優れた耐水性・耐湿性も備えています。その一方で燃えやすく、燃焼時には有害なガスを発生させるため、火を扱う場所の近くには使わない方が良いとされています。

このような特性の違いがあるため、つぎに解説する断熱性能や劣化しやすさなどを考慮して、専門家の意見を仰ぎつつ選んでいくことが重要です。

断熱材の重要な評価基準

断熱材を選ぶ際、選定の基準となるポイントとしては以下が挙げられます。

  • 単価
  • 断熱性能
  • 耐水性・耐湿性
  • 劣化しやすさ

熱心に調べた経験がない方にとって、それぞれの断熱材にどの程度の違いがあるのかは分かりづらいものです。

そのため、つい価格の面を気にしてしまいやすいのですが、先ほど解説した電力消費量以外の部分でも「高性能な断熱材」を選ぶ方が経済的なメリットがあるといわれています。

というのも、家を建てる環境に応じた適切な断熱材を選ばなければ、壁のなかで頻繁に結露が起こることになり家全体の劣化を早めてしまうのです。

また断熱材の性能を最大限に発揮させるためには、断熱材を適切に設置していく必要があるため、断熱材選びと同じくらい施工業者の能力も重要です。どのような工法に対応できるのか、どの程度の過去実績があるのか、できる限り調べることをおすすめします。

夏に強い家づくりにおける通風の重要性

夏場の快適性を左右するポイントの1つに風通し、いわゆる「通風」も挙げられます。

ただし、通風は専門家のあいだでも真逆の意見が飛び交う部分です。ですので「賛否両論ある通風をどこまで重要視するのか」の判断を下すためにも、ぜひこの章を最後までご覧ください。

通風とは?風通しと快適性の関係

住居における通風は、基本的に風通しのことを指します。

とくに夏場においては室内の熱気を屋外に出し、新鮮な空気を取り入れて快適な室内環境を維持するために通風が重視されます。

また空気中にはカビの胞子やダニの死骸、細菌など衛生的に好ましくない汚染物質が含まれているため、これらを排出するためには空気の入れ替えが必要だとするのが一般的な考えです。

このほか、風通しを良くして冷房の稼働時間を短縮しつつ涼しさを維持したり、冷風に長時間当たることで起こる冷えや夏バテ(冷房病)を避けたり、通風に期待される夏場の効果は複数あります。

通風を確保するために重視すべきポイント

通風を確保して夏場も涼しく快適に過ごすために、家づくりの段階で重視すべきポイントには以下が挙げられます。

  • 窓の数
  • 窓の位置
  • 設置する窓の機能

通風に関して、家づくりの段階で意識すべきポイントはずばり「窓」です。

とくに風通しを良くしたい部屋には、2つ以上の窓を設置することをおすすめします。また2つ以上の窓を設置する場合、同じ方角に窓を設置するのではなく、直角方向や直線方向に風が移動するように意識すると良いでしょう。

窓を2つ以上設置できない部屋に関しては、ドアを開放してほかの部屋にある窓から外気を取り込んだり、風を取り込みやすいウインドキャッチ窓を採用したりすることで、通風の効率を改善できます。

出典:LIXIL「配置を工夫して、明るく風が通る快適な住まいに

事前に知っておきたい通風の注意点

「室内の汚染物質やにおいを排出するために通風は重視すべき」という考えが一般的ではありますが、一方で「夏は通風に頼るとダニ・カビが発生しやすい」と注意を促す意見もあります。

前提として、一年を通じて夏季は外気の湿度が高い傾向にあります。

そのため、仮に除湿器や冷房の除湿機能で室内の湿気を除去していたとしても、窓を開いて外気を取り入れてしまえば部屋の湿度が上がってしまうのです。

そして、室内の湿度上昇にともなってダニやカビが発生する可能性は上がります。一般的にダニは湿度が60%を超えると発生しやすくなり、70~80%を超えるとカビの活動が活発化するとされています。

そのため湿度が高いエリアに住む場合には、必ずしも「冷房ばかりに頼らず、夏場も積極的に外気を取り入れた方が健康的」とはいえない可能性がある点にはご留意ください。

まとめ

夏でも快適に過ごせる家づくりにおいて、断熱性と通風の確保は最重要項目だといえます。

部屋の涼しさを最小限の電力で維持できるように断熱性を高め、冷房のつけっぱなしによる健康リスクを避けるために通風も確保しておくことで、より健全で快適に夏を過ごせる家づくりができるはずです。

また断熱性と通風にこだわった家は、夏だけでなく冬にも活躍します。

まず、断熱性能が優れている家は暖かい空気を逃さず、冷たい外気を入れない効果が期待できます。そして、ウイルス対策のために冬も換気が推奨されますが、通風が優れていれば短時間で空気の入れ替えができるため、寒い外気にさらされる時間を最小限にできるからです。

大切な家族が過ごす空間だからこそ「長期的に効果がある投資」と捉えて、家づくりの断熱性と通風について熟考することをおすすめします。