【2023年版】住宅ローンは変動・固定金利のどちらがベスト?低金利政策の動向と将来の見通しをわかりやすく解説

ローンを利用した住宅購入を検討するとき、何より気になるのが住宅ローンの動向と今後の見通しです。しかし、多くの人にとって「住宅ローンの金利がなぜ変わるのか」や「どういう場合に金利が上昇するのか」といった金融にまつわる情報は、理解が難しく感じられるものです。

そこで今回は、住宅ローンの利用を考える際に最低限必要となる知識を1記事にまとめました。

住宅ローンの金利の決まり方を復習しつつ、日本銀行(通称:日銀)が公開するレポートなどを参考に「2023年以降の金利の見通し」について解説していきます。

住宅ローン金利の決まり方

住宅ローンの金利は、返済期間中に金利が変わる「変動金利」と、当初設定された金利から変わらない「固定金利」に大別されます。それぞれの金利は、一般的に以下に基づいて確定します。

項目 概要
変動金利 日銀の政策金利の影響を受ける「短期金利」に基づいて決まる金利
固定金利 新発10年国債利回りに代表される「長期金利」に基づいて決まる金利

上記の考えを基本として、住宅ローンの金利タイプには主に「変動金利型・固定金利型・固定金利期間選択型」の3つが用意されています。

項目 概要
変動金利型 金融情勢に応じて返済中に借入金利が変動し、返済額が増減するタイプ
固定金利型 完済まで借入時の金利が適用され、返済額が一定となるタイプ
固定金利期間選択型 一定期間のみ固定金利が適用され、期間終了後に変動金利へ移行、あるいは規定の範囲で再度金利を固定させられるタイプ

なお、住宅金融支援機構が公表している「住宅ローン利用者の実態調査」によれば、2023年4月時点における住宅ローン利用者の割合は以下のようになっています。

  • 変動金利型:3%
  • 固定金利型:3%
  • 固定金利期間選択型:3%

とくに変動金利型の利用者が多い理由としては、これまで日本では長いあいだ低金利時代が続いていたことや、固定金利型に比べて変動金利型は金利が低く設定される傾向があることに関係しています。

ただし、変動金利型の住宅ローンは返済期間中に金利が上昇するリスクが潜んでいる都合上、返済が当初の計画通りに進まないケースもあります。

そのため2023年以降の金利がどうなるか、その動向について調べたり専門家の助言を得たりしつつ、慎重に判断を下すことが重要です。

2023年以降の変動金利はどうなるのか

一般的に、住宅ローンを利用する際に気になる金利は、返済期間中に変動する可能性がある「変動金利」です。

変動金利は、基本的に日銀の政策金利の影響を受ける短期金利に基づいて決められます。そのため、短期金利の今後の動向について考えることで、変動金利型の住宅ローンを利用する際のリスクを予想できます。

まず、将来的な金利の推移を正確に予想することは不可能ですが、従来通り日銀が金融緩和政策を続ける限り、変動金利はこれまでと同様に横ばいを維持するとの見方が有力です。

実際、2023年1月に行われた金融政策決定会合では、低金利政策の継続が決定されました。

また、2023年上半期の時点で日銀が掲げる「消費者物価指数の前年比2%上昇」は一時達成されたものの、日銀は2023年4月のレポートにおいて2024~2025年度における消費者物価の見通しを低く見積もっています。

これを加味すると、すぐに金利が大きく上昇する可能性は高くありません。

安定的な物価上昇が見られれば、日銀が利上げを検討するシナリオもあり得るため注意は必要ですが、今後しばらくは低金利が続くと予想する意見が多数です。

2023年以降の固定金利はどうなるのか

固定金利は、新発10年国債利回りの影響を受ける長期金利に基づいて決められます。

固定金利型の住宅ローンは、返済期間中に金利が変わらず安定した返済計画を立てられることが利点ですが、固定金利は2022年ごろから上昇傾向にあります。

また2023年7月、日銀は金融政策決定会合で金融緩和策の一部を修正し、上限を0.5%としていた長期金利に関して「市場動向に応じて一定程度の上限超過を認める」ことを容認しました。

これにより今後は金利が上向き基調となり、住宅ローンの固定金利が上昇する可能性も指摘されています。

金利が上がった場合の対策とは?

変動金利型や固定金利期間選択型の住宅ローンを利用している場合、金融情勢の影響により返済当初より金利が上振れするケースが考えられます。そのような場合にとれる対策として、代表的な選択肢は以下の通りです。

  • 繰り上げ返済のための資金を用意しておく
  • 住宅ローンの借り換えを検討する
  • 住居の売却を検討する

それぞれ順番に解説していきます。

繰り上げ返済のための資金を用意しておく

金利が上昇する局面では、繰り上げ返済を行って残債を減らし、支払い利息を減らすことが対応策の1つとして候補に挙がります。

ただし、当然ながら繰り上げ返済を行うためには、返済用のまとまった資金を用意しておく必要があるため、事前に「金利上昇に備えて資金を確保しておこう」と準備を進める必要があります。

そのため、住宅購入時にすべての資金を頭金として使い切るのではなく、一部の資金を手元に残して返済計画にゆとりを持たせることも検討すべきです。

なお「住宅ローン利用者の実態調査」による2023年4月時点の回答によれば、今後金利が上昇したときの対応として、一定割合の住宅ローン利用者が繰り上げ返済を検討しています。

たとえば、もっとも多数派といえる変動金利型の利用者の回答を見ると、金利上昇時に検討されている対応として「全額完済」や「一部繰り上げ返済」を選ぶ割合は、以下から読みとれるように全体の約36%です。

  • 余力があるため返済を継続する:1%
  • 金利負担が大きくなれば完済する:0%
  • 負担軽減のため一部繰り上げ返済をする:3%
  • 借り換えを行う:1%
  • わからない:5%

参考:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査

住宅ローンの借り換えを検討する

「住宅ローン利用者の実態調査」のうち、全体の約9%を占めた「借り換えを行う」という方法も、金利上昇時における有効な選択肢の1つです。

繰り上げ返済が難しい場合であっても、より低い金利の住宅ローンへ借り換えができれば、その分だけ住宅ローンの返済にかかる負担を減らせるためです。

ただし借り換え前後の金利水準や残債額、手数料などの諸費用によっては借り換えによる負担軽減が見込めない場合もあります。

そのため、あらかじめシミュレーションを行ったり専門家に相談したりするなどの準備を経て、ほぼ確実に返済の負担が減ることを確認してから行動に移すことを推奨します。

「住宅ローン利用者の実態調査」の回答では、金利上昇時の対応に関して「わからない」と答えた住宅ローン利用者が約20%いましたが、上記のような対応を迅速に検討するためにも金利上昇時の対応シナリオは事前に考えておくべきでしょう。

住居の売却を検討する

住宅の価値が高く、間取りや立地など売却しやすい条件がそろっていれば、売却により得た資金をローン返済に充てる選択肢も候補となります。

進んで検討するような対応ではないものの、住宅ローンの返済が長期間滞ると、自宅が差し押さえられ競売にかけられる可能性があります。

競売にかけられた物件は市場価格を下回る金額で取引されるほか、物件の所有者自身の個人信用情報にも傷がついてしまうため、競売はもっとも避けたい状況です。

以上の理由から、繰り上げ返済や借り換えが難しく、返済期間や毎月の返済減額の交渉も困難な場合には、売却も対応策の1つとして考慮すると良いでしょう。

事前のシミュレーションが重要

住宅ローンに関する失敗を減らすためには、何といっても「借入前にいろいろなシナリオを考えておく」ことが重要となります。

いざ住宅ローンの返済を始めた段階でとれる対応は、繰り上げ返済・ローン借り換え・住居売却の3つが主となるため、選択肢として決して多いとはいえません。

しかし、事前に複数のパターンを想定しておくことで、金利が上昇したとしても冷静に対応できます。たとえば、以下のようなシミュレーションをしておけば「金利がこのくらい変動したら、こういう行動をとろう」といった指標をつくれるはずです。

  • 金利の上昇幅別に返済額を試算してみる
  • 返済額が増加した際の家計収支を試算してみる

もちろん、銀行の相談窓口や不動産会社などの専門家に相談することも賢明な選択ですが、許容できる金銭的負担やリスクは家庭ごとに異なるため、まずはある程度の試算をしておくことをおすすめします。

まとめ

2023年の金利相場を見ると、変動金利が0.5%を下回るケースが多い一方、固定金利は1~1.5%以上となるケースが散見されます。そのため、2023年時点の金利を基準とするなら、変動金利の方が金銭的負担の面では有利でしょう。

ただ、今後1~2年先も変動金利が急上昇する可能性は低いと思われる一方、住宅ローンの返済期間は30年以上になる場合も多く、そこまで長期になれば金利推移を予想することは不可能となるため、変動金利が長期的に金銭的負担を抑えられる選択肢となる保証はありません。

上記を踏まえ、リスクを許容して現状では金利が低い変動金利を選ぶのか、完済まで金利が変わらない固定金利を選ぶのか、複合的な方式をとった住宅ローンを選ぶのか検討してみてください。