戸建て住宅のメンテナンス計画は重要?劣化が早い場所と点検・補修スケジュールを解説

マンションとは異なり、戸建て住宅の場合は「どの箇所をどれくらいの頻度でメンテナンスするか」を自分で決めなければなりません。

しかし、事前情報がないままメンテナンス計画を立ててしまうと、修繕が不十分となり建物の寿命を縮めてしまったり、必要以上にメンテナンスへ費用をかけてしまい出費が膨らんだりします。

どちらかといえば「メンテナンス計画の考えが甘く後悔する」というケースが多い傾向にあるため、今回はメンテナンス計画の考え方に焦点を当てて解説していきます。

メンテナンス計画とは

住宅に住み始めてから早期にメンテナンス計画を策定しておくことで、以下のようなメリットを得られます。

  • 建物の寿命が延びる
  • 安全性や快適性を確保できる
  • 支出を事前に予想して対応できる

メンテナンス計画を立てていない場合、つい「この部分は古いけれどまだ大丈夫だろう」と判断してしまいます。誰しも出費が増えるのは嬉しくありませんから、多少の劣化には目をつむってしまいがちなのです。

しかし、どこか1ヶ所が劣化して十分な性能を発揮できなくなったとき、そのしわ寄せが他の部分に波及して家の寿命を縮める可能性を考えてみてください。たとえば、老朽化した屋根を放置したために少しでも雨漏りが起こってしまうと、湿気により家が腐朽します。

またメンテナンス不足は家の寿命を縮めるだけでなく、家族の安全や快適性にも影響します。先ほどの「雨漏りによる家の腐朽」を例にすると、まずカビの発生による健康被害が考えられますし、木造住宅であればシロアリ被害による家屋の強度低下が懸念されるのです。

そして、早めに対応した場合に比べて修繕規模が大きくなりやすいため、あらかじめ計画を立ててメンテナンスを実施していた場合よりも、予想外に大きな支出が発生しやすくなります。

これらの理由から、建物のメンテナンス計画は重要度が高いのです。

戸建て住宅の劣化しやすい場所

どのような場所であっても、基本的に1~2年に1回以上は点検することをおすすめします。そのなかでもとくに注意深く確認しておきたい「劣化しやすい場所」は以下です。

  • 屋根
  • 外壁
  • ベランダ
  • 外構

いずれも、常に風雨や太陽光(紫外線)にさらされているため、屋内に比べて劣化が激しい傾向にあります。屋内にも水回りや床材など劣化しやすい部分はありますが、屋外は普段の生活で異常に気付きにくいため、とくに注意してチェックしておきたい場所です。

屋根

使う屋根材により望ましい点検時期や交換時期は異なりますが、可能であれば2~3年に一度、少なくとも5~6年に一度は屋根の点検をしておきたいところ。

本来ならふき替えの時期は10~20年単位で検討しますが、大きな割れ・ずれが起これば雨漏りが発生して家を腐朽させる原因となるため、問題を早期発見するためにもまめな点検が望ましいでしょう。

ただし、近年では「点検商法」と呼ばれる詐欺まがいの行為が行われている点に注意してください。

点検商法は、屋根工事の業者を装った人物が「お宅の屋根はすぐ修理が必要だ」といい、高額な工事費を提示して契約させる行為です。実際に屋根にのぼって点検をしたそぶりを見せ、仮に屋根が傷んでなかったとしても工事を急かしてくるのです。

もし勢いに押されて契約してしまっても、特定商取引法により「契約書を渡された日から8日間」はクーリングオフによる契約解除が可能ですが、そもそも点検商法に巻き込まれないようその場で安易に契約しないよう注意しましょう。

外壁

外壁も屋根と同じく常に風雨や紫外線にさらされているため、とくに劣化しやすい部位です。使われている外壁材により適切な交換時期が変わる点は屋根と同様ですが、はしごを使って高い場所へのぼる必要がなく、素人であっても簡単な確認作業ができます。

たとえば、日本の住宅に使用されている外壁材のシェアは、サイディングとモルタルが大半を占めています。以下は日本サッシ協会の調査をもとにした、日本窯業外装材協会が公開している戸建ての外壁材におけるシェアです。

画像:日本窯業外装材協会「統計データ

なかには劣化がわかりにくい素材・塗料もありますが、広く普及しているサイディングやモルタルのほとんどは、外壁材が劣化したときに「チョーキング」と呼ばれる現象が起こります。そのため、劣化の初期症状を見つけやすいのです。

チョーキングが起こっているかどうかは、外壁を指で撫でるように触ると確認できます。指に白い粉がつけば塗料が劣化しており、外壁塗装の機能が失われつつあると判断できるため、メンテナンスが必要となるのです。

チョーキングが発生した瞬間、深刻な問題が起こるわけではありませんが、放置すると雨水の侵入を防げなくなり外壁材の劣化を早めます。

外壁のひび割れとチョーキングは見つけやすい劣化のサインであるため、少なくとも2~3年程度のスパンで全体をくまなく確認することをおすすめします。

ベランダ・バルコニー

ベランダやバルコニーも風雨や紫外線の影響を受けて劣化しやすい場所です。とくに手すりのぐらつきを放置すると危険であるため、家族の安全のために破損や腐食がないか定期的に点検しましょう。

外構

門や塀、郵便受けなど、一般的な外構(建物の外にあるもの)は劣化を放置しても危険性は高くありませんが、錆や腐食を放置すると見栄えが損なわれます。また防犯のためのカメラや警報装置も、故障を放置してしまうといざというとき役割を果たしてくれません。

強風や豪雨、地震などのあとには破損しやすいため、とくに外からの衝撃を受けやすい設備はこまめな確認をおすすめします。

戸建て住宅のメンテナンス計画の一例

原則として、住宅に使われる素材や立地条件などによって、家屋の劣化のしやすさや適切なメンテナンス時期は左右されます。そのため、実際には専門家の意見を仰ぎつつ、各ケースに応じたメンテナンス計画を立てるのが理想です。

ですので、ここから紹介するメンテナンス計画はあくまでも一例である点にご留意ください。

期間 金額が大きい主なメンテナンス項目
5年ごと l   防蟻工事
10年目・20年目 l   屋根の塗り替え

l   外壁の塗り替え

l   ベランダの防水処理

30年目 l   屋根のふき替え

l   外壁の張り替え

l   ベランダの全面交換

適時交換 l   室内壁・天井の塗り替え

l   水回り・ガス設備の交換

l   外構の交換

躯体が木材で構成されている場合、最重要となるメンテナンスにはシロアリ対策が挙げられます。シロアリを放置すると住宅の土台がもろくなりますし、シロアリの薬剤は効力が5年程度であるため、5年に一度の薬剤塗布が推奨されます。

続けて10年ごとに屋根と外壁、ベランダのメンテナンスができると理想的です。

材質や周囲の環境により劣化状況は変わりますが、屋根や外壁は施工から5年目以降に劣化が見られ始めるため、10年程度で再塗装が必要となるケースも。30年目になると屋根のふき替え、外壁の張り替えが必要となり、ベランダやバルコニーも各部位の交換を検討する時期となります。

屋内の壁・床・天井は家族構成や過ごし方によって劣化状況が変わりやすく、また気分転換のために交換することも多々あるため、水回りやガス設備、外構とともに定期的な点検と適時交換が好ましいでしょう。

戸建て住宅は自力でメンテナンスできる?

近年「古い家屋をセルフリノベーションして生まれ変わらせる」といった、本格的なDIYのブームがありました。それと同じ要領でメンテナンスができるのではないか……と考える声もあるようですが、あまりおすすめできる方法ではありません。

すでに何回も大規模なDIYを経験していたり、知人や友人に専門家がいて協力したりしてもらえるならともかく、DIY初心者が知識不足のまま補修作業を行うと「ちゃんと補修できたのかどうか」の判断すらままなりません。

仮に、専門家に一任すれば100%補修できるところを、初心者が知識不足のまま行ったために部分的にしか補修できていなければ、不十分な対応が原因となり家屋の寿命を縮める可能性も懸念されます。

壁紙を張り替えたり、門を交換したりといった些細な部位であればDIYでも問題ありませんが、屋根や外壁の補修など家屋全体の劣化に関わる部分は専門家に任せることを推奨します。

まとめ

初めて家づくりを進めるとき、ついマイホームの完成をゴールと捉えてしまいますが、家族の想いが詰まったマイホームを長く維持するためには定期的なメンテナンスが不可欠です。

とくに屋根や外壁の点検・補修、シロアリ対策を怠ると家の寿命が短くなりやすいため、いざ問題が発生してから焦ることのないよう、事前に大枠のメンテナンス計画を策定しておきましょう。