宅地の地盤調査は何をするの?本当に安心して住める家づくりに必要なのか徹底解説
私たち人間の目で観察している限り、どの土地も頑丈そうに見えます。
しかし実は「柔らかく弱い地盤」もあり、そのような土地を改善することなく建物を建てると、地震災害の際に液状化してしまったり、土地が重さに耐えられず建物が傾いたりすることも。
より安心して過ごせる住まいづくりのために、今回は地盤調査と地盤改良について徹底的に解説します。とくに「無駄な調査や工事をさせられているのでは?」とお考えの方は、その疑問を解消するためにぜひご一読ください。
地盤調査とは?目的と重要性
地盤調査は、建物を安全に支えられる土地かどうかを判断するために、土地の強度を調べて「安全性を確保するためにどうすべきか」を見極める調査です。平成12年の法改正により地盤調査は義務化されたため、原則として必須の工程となりました。
また「家族が安心して暮らせる家づくり」という観点で、地盤調査は重要な役割を担っています。軟弱な地盤に家を建ててしまった場合、基礎や壁にひび割れが起きたり建物に隙間や傾きが生じたりする可能性があります。
最悪の場合には家の一部が損壊し、倒壊のリスクが高くなることも想定されるため、地盤調査とそれにともなう地盤改良工事は重要なのです。
地盤調査のタイミング
地盤調査を行うタイミングは、土地へ建物を建てるまえです。たとえば、新しく土地を購入して自宅を建てる場合も、すでにある中古住宅を建て替える場合のどちらにも地盤調査が必要となります。
なお、土地を購入するまで所有者は土地の売主であるため、売主の許可がなければ購入前に地盤調査はできません。ただし、場合によっては売主に過去の地盤調査報告書を確認させてもらえるケースがあります。
また、売主の許可さえあれば地盤調査を行えるものの、調査費用を分担するのであれば負担の割合がトラブルの原因となる可能性も考えられます。土地の購入前に地盤調査を実施する場合には、とくにトラブルに発展する可能性が考えられる金銭面に関して、はっきりと取り決めておくことが推奨されます。
地盤調査の種類とその特徴
住まいを建築する場合に行われる地盤調査は、主に以下の3種類です。
- スクリューウエイト貫入試験
- 表面波探査法
- ボーリング調査
ただし、戸建て住宅ほどの規模の建物であれば、ほとんどの場合はスクリューウエイト貫入試験か表面波探査法のどちらかとなります。詳しく理解しておく必要はありませんが、おおまかな特徴と費用感について紹介します。
スクリューウエイト貫入試験
スクリューウエイト貫入試験は、鉄製の棒を地面へ垂直にさして地盤を調べる方法で、戸建て住宅を建てる場合の地盤調査に使われることがもっとも多い手法です。戸建て住宅の場合、建物の四隅と中心の5ヶ所を計測する場合が多く、調査は半日程度で終わります。
ほかの地盤調査に比べて相場価格は低い傾向にあり、費用は平均して3~5万円程度です。
表面波探査法
表面波探査法は、振動を起こす「起振機」を使い、地面に振動を与えたときの情報から地盤を調査する方法です。大きな重機が入れない場所でも使用でき、かつ土地に穴をつくらない非破壊的な手法として知られています。
地中に空洞があるなどのケースを除き、基本的には地盤の強度を解析する精度が高いため、誤った解析により不必要な工事を行うリスクを減らせる点が特徴です。
費用相場の平均は8~12万円となっており、スクリューウエイト貫入試験より高額となる傾向があるものの、調査の精度を優先する場合に適した調査方法となっています。
ボーリング調査
ボーリング調査は、マンションなどの大規模建築物を建てる際に使われる地盤調査方法です。一定の深さごとに土のサンプルを採取して、掘っている場所の強度や土の質を調べ、どのように杭を打てば十分に建物を支えられるかの判断に使われます。
大掛かりな作業となり、費用は15万円以上、作業に数日を要するケースが一般的ですが、個人の住まいを建てる際に使うことはほとんどありません。
地盤調査で気をつけたいポイント
通常、地盤調査会社は個人の依頼を受け付けていない場合が多く、基本的にはハウスメーカーを通じて地盤調査を依頼することになります。
ただ、地盤調査はそのあとにかかる費用的な観点でも、居住を始めてからの安全面でも重要な工程です。
依頼先となる地盤調査会社が丁寧な仕事をしてくれるかどうか判断するために、あらかじめハウスメーカーから依頼先候補となっている業者名を聞き出し、実績や評判をわかる範囲で調べておくと安心でしょう。
また事前に調べた結果、提携している地盤調査会社に不安がある場合には、ハウスメーカーに「別の地盤調査会社に依頼できないか」を聞き、可能であれば希望の依頼先を提示すると後悔するリスクを未然に防げます。
地盤改良工事の種類
地盤調査の結果、住まいを建てる土地が軟弱であると判明した場合には、地盤改良工事を実施することになります。現在はさまざまな工法が存在しますが、一般的に広く知られる工法は以下の3つです。
- 表層改良工法
- 柱状改良工法
- 鋼管杭工法
業者によって取り扱う工法が異なり、また工法によっては中~大規模建築物に使われる工法もあるため、ここではもっとも一般的で従来からある上記3つの工法を紹介します。
また各工法の費用相場をまとめていますが、以下のように地盤改良の費用は地盤調査のあとに確定します。
- 複数のハウスメーカーから取り寄せたプランを比較
- 概算見積もりをもとにハウスメーカーを決定
- 地盤調査の実施
- 地盤改良の工事費用が確定
- 請負工事契約を締結
- 着工
上記の通り、実際に地盤調査を行うまで地盤改良工事の正確な費用はわからないため、いまから解説する費用感はあくまでも目安であることにご注意ください。
表層改良工法
地表面全体を1~2メートル掘り起こし、セメント系固化材で強度を改善する方法が表層改良工法です。基本的には、軟弱な地盤が地表から1~2メートル程度と浅い場合に使われます。
軟弱な層が浅い場合にしか対応できないものの費用は比較的安く、1坪あたり1~2万円前後が費用相場の1つの基準となります。
柱状改良工法
セメント系固化材を使用して地盤のなかに柱状の補強体をつくり、建物を支えられる地盤をつくる方法が柱状改良工法です。軟弱な地盤が地表から2~8メートル程度と、やや深い場合に使われます。
表層改良工法より価格は上がり、1坪あたり2~3万円前後が費用相場の1つの基準となります。
小口径鋼管杭工法
鋼管(鋼鉄製の管)を地中深くの固い地盤に打ちこみ、建物を支えられる地盤をつくる方法が小口径鋼管杭工法です。軟弱な地盤が8メートル以上と厚い場合に採用される方法で、地中30メートルまでの地盤補強に対応できます。
1坪あたり3~5万円程度と比較的高額ですが、施工に必要となる機材も小さく工期も短いため、重機を搬入しにくい場所で短期間のうちに工事を行うケースに適しています。
地盤改良が不要な強い土地の選び方
地盤調査を実施するまで、地盤の正確な強さを把握することはできませんが、以下のようなポイントに注目することで明らかに地盤が弱そうな土地を避けられます。
- 周囲の地形
- 道路の状態
- 住宅の状態
- 公開資料
まず周囲が水に囲まれている地域は、地盤に水が含まれており比較的軟弱な状態となっている場合があります。また道路のひび割れが見られたり、土地周辺の住宅の壁や塀が変形していたりする場合も、地盤の弱さが関係している可能性が考えられます。
また国土交通省が公開する「重ねるハザードマップ」を開き、地盤の状態や液状化リスクを表示できる地形分類の項目を参照したり、より地盤に焦点を当てて情報が見られる「地盤サポートマップ」を利用したりすることで、地盤調査前でもある程度の情報を集めることが可能です。
ただし、上記のような方法はあくまで参考程度の情報しか得られないため、確実に弱い地盤を見分けられるわけではない点はご注意ください。
まとめ
地盤調査の結果、地盤改良工事が必要となれば、場合によって100万円を超える高額な工事費用がかかります。
しかし、記事のなかでもお伝えした通り、地盤調査や地盤改良工事は安全な暮らしのために不可欠なものであり、かつ「工事が必要か不要か」をあらかじめ知る手段はありません。
例外として、売主に過去の地盤調査報告書を確認させてもらえるケースはありますが、基本的には調査後に地盤改良工事が必要になる場合を見越して、事前に準備しておく資金には余裕を持たせておくことが大切です。