ZEH仕様って?政府が定めるZEH普及の目標とZEHを導入するメリットってなに?

住宅の光熱費をおおむねゼロにしてしまうという『ZEH仕様』について注目が集まっています。

2020年にハウスメーカーによって建築された住宅のうち、約56%はZEH仕様となっており、政府はさらに普及するように推進しています。

特に住宅では、冷暖房や給湯、換気、照明など家電製品・機器によるエネルギー消費量の割合が高いため、コストの問題や災害時での停電対策などに関心を持っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

そこでここでは、『ZEH仕様』について詳しくご紹介し、政府が定める普及のための目標やメリットなども踏まえてご説明いたしましょう。

ZEH仕様って?

ZEH(ゼッチ)とは、『Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)』の頭文字を取って略した言葉です。

具体的には、

  • 【断熱性能】屋外の熱を室内に伝わりにくくし、室内の温度を外に逃がさない
  • 【省エネ性能】省エネ効果の高い家電や機器を導入する
  • 【創エネ性能】太陽光発電システムなどでエネルギーを創りだす

といった取り組みを行って、消費エネルギー量を抑え、創るエネルギーとの収支をおおむねゼロにする住宅のことを指しています。

電気料金を大幅に削減させることが可能で、しかも太陽光発電システムを活用するためにCO2の排出はゼロなので環境に優しい設計となっています。

ただし上記3つの要素には、『ZEH仕様』と呼ばれる、クリアすべき基準が設定されています。

断熱性能

『断熱性能』とは、住宅において屋外の熱を室内に伝わりにくくし、室内の温度を外に逃がさない性能のことを指しています。

夏の暑い日の熱い外気、あるいは冬の寒い日の冷気が室内に伝わりにくければ、エアコン効率が良くなりますので、エアコンの消費電力を抑えることができ快適に過ごせます。

この断熱性能については『UA値』と呼ばれる数値で示されており、外壁や屋根、天井、開口部などから外部に逃げる熱量の平均値であらわされます。

数値が低いほど熱が逃げにくく省エネルギー性能が高い住宅であるといえ、ZEH仕様においては地域によって0.4~0.6以下となっています。

この数値は、省エネ基準として用いられる『低炭素建築物基準』、2025年に適合義務化する『改正省エネ基準』よりも低く規定されています。

省エネ性能

『省エネ性能』とは、高い断熱性能を有する壁や屋根に加えて、電力消費に優れている家電製品や機器を導入することによって、エネルギー消費量を抑える性能のことを指しています。

ZEHにおいては、電力消費に優れている『空調』『換気』『給湯』『照明』を導入することによって、省エネルギー基準達成住宅より2割以上もエネルギー効率が良くなることが知られています。

特にこれらの家電製品や機器は生活において欠かせないものではありますが、同時に消費電力も高いために、電力コストで頭を悩ませているご家庭も少なくありません。

そのため、それぞれの家電製品・機器においてZEH仕様が定められており、基準や安全性を満たしたものだけが高効率設備機器として認められているのです。

ZEH対象の空調においては、エネルギー計測装置(HEMS)で制御できることが条件となっており、エネルギー効率においても区分に応じた基準をクリアしておかねばなりません。

換気においては、1時間あたり0.5回以上の換気量を確保する換気設備の設置が義務付けられており、しっかりと換気しながらも室内の気温を保つことが重要なポイントとなります。

給湯においては、近年では空調と並んでエネルギー消費の高い機器の一つになっており、エコキュートやエコジョーズなど省エネ性能の高い給湯設備がZEH仕様として登場しています。

照明においてはLED照明のコストパフォーマンスがとても高く、従来の蛍光灯や白熱電球と比較して、長寿命で電力コストの削減にも大きく貢献します。

創エネ性能

『創エネ性能』とは、太陽光発電システムなどによってエネルギーを創りだす性能のことを指しており、創り出したエネルギーと消費する消費エネルギー量との差をおおむねゼロにすることがZEH仕様となっています。

太陽光発電システムなどによる創エネによって電力コストを大幅に抑えゼロ、もしくはゼロ以上にすることがZEH仕様として求められています。

創った電力は、そのまま蓄電池に蓄えておくことができ、さらには電気自動車に充電しておくことによって、経済的であるのはもちろん、快適な暮らしの実現にもつながります。

ZEH補助金制度について

ZEH仕様の住宅を建てる場合や、新築の建売住宅を購入する場合、ZEH補助金制度を活用することができるケースがあります。

ZEH補助金制度の対象は4種類あり、

  • ZEH支援事業(ZEH)
  • ZEH支援事業(ZEH+)
  • 次世代ZEH+(注文住宅)
  • 次世代HEMS実証事業

と言った、省エネ性能や設備の違いによって分けられています。

補助金額については、いずれも一戸あたりの定額となっています。

さらに蓄電システムの導入などによって補助額が加算されることになっています。

政府が定めるZEH普及の目標

経済産業省・資源エネルギー庁においては、高い省エネルギー性能を持ち、電力コスト削減にも優れているZEHの普及を目指し、さまざまな取り組みを行っています。

冒頭にもお伝えしている通り、経済産業省の取り組みによって、2020年のハウスメーカーでの新築注文住宅においては、ZEH仕様である割合が約56%となっています。

政府が定めるZEH普及の目標として、第6次エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)において次の2点が示されることになりました。

  • 2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す
  • 2030年において新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す

これらの政府目標を達成するために、さらなるZEHの普及に向けた取り組みが行われているのです。

政府のZEH普及に対する取り組みは、これまでにも積極的に行われており、一定の条件を満たしたハウスメーカーや工務店、建築設計事務所、リフォーム業者、建売住宅販売者などに対して「ZEHビルダー」として登録を進めてきました。

このZEHビルダーは、おのおのの企業において受注する住宅のうちZEHが占める割合(ZEH化率)を、『2020年までに50%以上とする』といった目標を宣言・公表することによって登録されることになり、屋号・目標値などが公表されてきました。

さらに2021年度からは新たなZEHビルダー制度が始まっています。

上記の政府目標を達成するために、2020年度のZEHの供給実績に応じた、次のポイントが示されています。

  • ZEH化率が50%を超えている場合は75%以上
  • ZEH化率が50%未満の場合は50%以上

を2025年度の目標として宣言・公表することによってZEHビルダーとして登録されることになります。

令和4年3月現在においてのZEHビルダーは、ハウスメーカーや工務店を中心に4,700社以上もの登録が見られています。

ZEHを導入するメリットってなに?

冒頭からZEH仕様についてご紹介してきましたが、導入することによっていくつものメリットが得られます。

月々の光熱費を安く抑えることができる

高い断熱性能を有する壁や屋根、優れたエネルギー効率を持つ設備を導入し、太陽光システムなどの創エネに取り組むことによって、月々の光熱費を大幅に安く抑えることができます。

さらに、創られたエネルギーが余った場合には、電力会社に売電することもできますので、収入を得ることも可能になります。

夏は涼しく、冬は暖かい快適で健康的な生活が実現できる

断熱性能の高い住宅は、エアコン効率がとてもよくなりますので室温を一定に保ちやすく、夏は涼しく、冬は暖かく快適に過ごすことができます。

さらに、冬は家全体を暖めることによって気温差をなくすことができますので、急激な温度変化による脳卒中や心筋梗塞を引き起こすヒートショックを防ぐ効果にも優れているといえるでしょう。

大規模災害による停電時でも安心な生活を送ることができる

近年においては、台風や地震など大規模の災害が各地で度々発生しており、停電の復旧が数日間続くようなことも見られています。

しかしそのような場合でも、太陽光発電システムによって創エネに取り組み、蓄電池によって蓄えておけば、いざという時に電力で困ることはありません。

非常時でも安心な生活を送ることができるのは、大きな安心に繋がるのではないでしょうか。

まとめ

この記事では、住宅の光熱費をおおむねゼロにしてしまうという『ZEH仕様』について詳しくご紹介しました。

すでに2020年においては、ハウスメーカーで建築された新築住宅において約56%はZEN仕様であり、多くの住宅においてZEH仕様が普及してきました。

政府はさらに2030年においては、新築住宅の60%をZEH仕様の住宅にすることを目標としています。

ZEH仕様の住宅では、高い経済性、快適性、レジリエンスといったメリットがありますので、今後もどんどん普及することが期待されています。