時短もコミュニケーションも両立するキッチンレイアウトとは?理想のタイプ・レイアウトパターンを解説
新築する家のキッチンを考える場合であっても、キッチンリフォームをする場合であっても、理想的なキッチンを実現するポイントは変わりません。
まず現環境のキッチンの良い点・悪い点を洗い出し、良い点を伸ばして悪い点を解消するキッチンの「タイプ」と「レイアウトパターン」を選べば、いまよりも理想的なキッチンへ近付きます。
今回はより使いやすく、より家族との絆を深めるためのキッチンづくりのポイントをまとめました。新築やリフォーム時にキッチン設計で失敗しないためのマニュアルとしてお使いください。
キッチンの使い勝手はワークトライアングルが9割
ワークトライアングルという言葉をご存知でしょうか?
ワークトライアングルは、キッチンにおけるシンク・コンロ・冷蔵庫の位置を3本の線で結んだ三角形を指します。
上記のようにシンク・コンロ・冷蔵庫の前面に三角形を作ったとき、三角形の線の長さが計3.6~6メートルに収まる場合、キッチンでの作業効率が高くなると考えられています。
3.6~6メートルより長くなれば移動効率が悪くなり、逆にこれよりも短ければ窮屈になり作業効率が悪くなるとされているため、キッチンレイアウトを考えるときには「適切なワークトライアングルができているのか」を優先的に確認しましょう。
調理器具やゴミ箱の配置にも注意
ワークトライアングルはあくまでレイアウトの主要な枠組みであり、実際のキッチンにはオーブンや電子レンジ、ゴミ箱などの配置とバランスを取りつつ考える必要があります。
各器具の配置は感覚的に決めるのではなく、キッチンでの作業内容を考慮して無駄の少ない効率的な導線づくりを心がけましょう。
食材の処理や調理、配膳や片付けなど「キッチン回りでやること」をざっと一覧で書き出しておくと、レイアウトを考えやすくなるためおすすめです。実際の手順は家庭により異なりますが、たとえば以下のようにキッチンでの作業と場所を書き出してみると良いでしょう。
- 使う食材を出す(冷蔵庫・食品庫)
- 食材を洗う(シンク)
- 食材を切る(ワークトップ)
- 食材を加熱する(コンロ・電子レンジなど)
- 廃棄物をゴミ箱へ入れる(ゴミ箱)
- 食器を用意する(食器棚)
- 食器に盛りつける(ワークトップ)
- 配膳する(ワークトップからテーブルへ)
- 食器をシンクへ移動させて洗う(テーブルからシンクへ)
- 廃棄物をゴミ箱へ入れる(ゴミ箱)
このように食材を準備するところから配膳・食器洗いまでの手順を洗い出せば、各作業がどこで行われるのか一目で分かります。
キッチンのタイプ別メリット・デメリット
I型やL型などの「レイアウト」とは別に、キッチンは3つの「タイプ」で分けられます。それぞれのメリットとデメリットを把握し、そのうえで具体的なレイアウト設計を考え始めると、スムーズに理想的な配置を導き出せるはずです。
- 独立型キッチン
- オープンキッチン
- セミオープンキッチン
ここでは基本となる上記の3タイプの特徴を解説します。
独立型キッチンの特徴
ダイニングと一体になっていない、ほかの部屋から独立したキッチンを「独立型キッチン」と呼びます。
独立型キッチンのメリット | 独立型キッチンのデメリット |
l 人目を気にせず調理ができる
l 収納スペースを確保しやすい l キッチンの外に煙や匂いが広がらない l 比較的小さい面積に収まる |
l ほかの部屋の様子が見えない
l 配膳や片付けに手間がかかる l キッチンに煙や匂いがこもりやすい l 別タイプのキッチンより閉塞感が強い |
独立型キッチンには上記の特性があるため、周囲の視線やほかの部屋への影響を気にせず、調理に集中したい方におすすめのキッチンタイプだといえます。
独立型キッチンに採用されるレイアウトには、後述する「I型キッチン」や「L型キッチン」が挙げられます。あわせてご確認ください。
オープンキッチンの特徴
リビングやダイニングと一体になっており、壁で区切られていないキッチンを「オープンキッチン」と呼びます。
オープンキッチンのメリット | オープンキッチンのデメリット |
l コミュニケーションを取りやすい
l デザイン性の高い空間を作りやすい l キッチンの開放感を演出しやすい l 配膳の手間を減らしやすい |
l 煙や匂いが広がりやすい
l 比較的広い面積が必要 l キッチンの外に水や油がはねやすい l 収納スペースを確保しにくい |
オープンキッチンには上記の特性があるため、家族や来客とコミュニケーションを交わしながら料理ができる環境を求める方におすすめのキッチンタイプだといえます。
オープンキッチンに採用されるレイアウトには、後述する「アイランド型キッチン」や「ペニンシュラ型キッチン」が挙げられます。
セミオープンキッチンの特徴
独立型キッチンとオープンキッチンの中間に位置するタイプのキッチンを「セミオープンキッチン」と呼びます。明確な定義はありませんが、完全に閉じた空間にあるキッチンではない一方、ある程度は周囲の視界が遮られるデザインとなっているものを指します。
設計次第でどちらのタイプにも寄せられる特性上、一概に「セミオープンキッチンのメリット・デメリットはここである」と断言はできませんが、希望に応じてちょうど良いバランスを目指せる点がメリットです。
キッチンレイアウトの種類
キッチンのレイアウトは、その配置により長所と短所が決まります。ここではレイアウトの種類を6つ紹介し、それぞれの特徴を解説します。
I型レイアウト
シンクとコンロが横並びになったI型レイアウトのキッチンは、定番であるためラインナップが豊富にあり、小さな面積にも無理なく配置できます。
横方向への移動が多くなるため、理想的なワークトライアングルを作りにくい欠点はありますが、コストや使用スペースの観点ではバランスが良い選択肢だといえるでしょう。
L型レイアウト
シンクとコンロをL字に並べたL型レイアウトのキッチンは、横方向に長いシンプルなI型レイアウトに比べて収納力が高く、調理スペースを広く取りやすい特徴があります。
L字のコーナー部分がデッドスペースになりやすいものの、複数人での料理に適しているため、家族や来客と一緒に料理を楽しむ場合には有力候補となります。
U型レイアウト
シンクとコンロ、作業スペースをU字に並べたU型レイアウトのキッチンは、体の向きを変えるだけで3方向へアクセスできるため、作業効率に特化した形だといえます。
コーナー部分が増えるため、よりデッドスペースが生じやすいデメリットはあるものの、随一の収納力と導線のコンパクトさが魅力です。
Ⅱ型レイアウト
シンクとコンロを切り分け、独立した並列の作業スペースを作るⅡ型レイアウトのキッチンは、省スペースと作業効率の高さに特化した形です。
リビングやダイニングからの視線を遮れない点をデメリットだと捉えない場合は、導線がコンパクトな無駄のない選択肢として候補になるはずです。
アイランド型レイアウト
壁から離れた場所に設置されるアイランド型レイアウトのキッチンは、空間を贅沢に使うことで得られる開放感が特徴です。キッチンを遮るものがなく4方向からキッチンを使えるため、複数人で調理や配膳を行いやすい点がメリットです。
一方で設置に必要となる面積が広い点や、壁から離れており手近な位置に大きな収納スペースを設けづらい点、比較的コストがかかりやすい点はデメリットとなります。
また4方向に水や油がはねる可能性があり、コンセント差込口が壁際のみの場合は長いケーブルが必須となるため、とくに慎重に設計を考える必要があるレイアウトだといえます。
ペニンシュラ型レイアウト
アイランドは「島」を意味しますが、ペニンシュラは「半島」を意味します。ペニンシュラ型レイアウトは、基本はアイランド型レイアウトに近いものの、片面のみ壁と接している点が特徴です。
これにより、調理や配膳への参加しやすさや開放感は維持しつつ、4方向にある程度のスペースを確保しなければならないアイランド型レイアウトに比べ、比較的小さな面積での設置を可能にしています。
キッチンのレイアウト設計でよくある失敗例
「キッチンのレイアウト設計で後悔した」という声は数多くありますが、とくに以下のような失敗例は起こりがちです。
- 収納力が足りず不便を感じる
- 広すぎるキッチンが周囲に圧迫感を与える
- 散らかった様子が目立ちストレスを感じる
1番目と2番目は想像しやすい失敗例ですが、見落としがちなのが3番目のケースです。
開放感のあるキッチンレイアウトを選んだ場合、リビングやダイニングで過ごしている最中に散らかったキッチンが目に入るため、ストレスを感じてしまう方が多いのです。
こまめな整理整頓が得意であれば問題になりませんが、実際のところ「散らかった状態にストレスを感じるけれど片付けは苦手」と思ってしまう方は少なくないはず。家族全員で協力して片付けるルールを作ったり、視線を遮る設計にしたりといった工夫が重要です。
まとめ
いまあるキッチンの良い点・悪い点を再確認し、良い点を伸ばして悪い点を解消できるキッチンレイアウトの組み合わせを選べば、キッチンの使い勝手は格段に上がります。
ぜひ本記事の内容を参考に、以下の組み合わせから理想的なキッチンを導き出してみてください。
キッチンのタイプ | レイアウトパターン |
l 独立型キッチン
l オープンキッチン l セミオープンキッチン |
l I型レイアウト
l L型レイアウト l U型レイアウト l Ⅱ型レイアウト l アイランド型レイアウト l ペニンシュラ型レイアウト |
気軽に変更できない設備だからこそ、なんとなく流行に合わせて決めてしまうのではなく、時間をかけてキッチンづくりを進めることを強くおすすめします。