新しい家の購入後の不動産登記や住所変更は必須?届出にかかる費用と必要書類を徹底解説
「新しい家の購入後、不動産登記や住所変更は必須なのか?」という疑問はよく挙がります。
結論からいうと、新しい家の購入後には不動産登記と住所変更の手続きを決められた期限までに行わなければなりません。届出の種類によっては、期限までに手続きを完了させなければ罰則が科せられるものもあるため、あらかじめどのような届出が必要となるのか予習しておきましょう。
不動産登記はいつ必要?用意する費用や書類
不動産登記には「表示の登記」と「権利の登記」があり、前者を表題登記、後者を所有権保存登記と呼びます。表題登記に関しては申請義務があり、対応を怠るとペナルティがあるためとくに注意してください。
表題登記にかかる費用と主な必要書類
新築住宅を建てた際に必要となる表題登記は、まだ公的に登記されていない不動産の所在や規格などを登録するものです。
建物や土地の所有権を取得した時点から1ヶ月以内に不動産を取得した人が申請することになっており、申請を怠った場合には10万円以下の過料が科せられる点に留意してください。
表題登記の申請は、一般的に土地家屋調査士への依頼を通じて行います。この際にかかる土地家屋調査士への依頼報酬額は平均8万円から10万円程度ですので、これを1つの基準として依頼先を検討してみてください。
表題登記の申請にあたり必要となる書類は以下の通りです。
書類名 | 概要・留意点 |
建築確認書・確認済証 | 建物が建築基準法の規定に適合する確認を受け、認められると交付される文書 |
工事完了引渡証明書 | 工事完了後、建築主に建物を引き渡したことを証明する文書(併せて印鑑証明書・資格証明書・登記事項証明書等が必要) |
検査済証 | 建物の完成後に行われる完了検査後、問題がなければ発行される文書 |
請負契約書 | 施主と施工会社で取り交わす契約書(工事代金領収書でも対応可能) |
住民票 | 申請者自身の住民票 |
委任状 | 代理人に申請を行ってもらう場合に必要となる文書 |
建物図面・各階平面図 | 建物の形状や敷地との位置関係などを示した図面 |
案内地図 | 法務局の担当者が現地確認を行う際に利用してもらう地図(Googleマップを印刷して印をつけたものや手書きのもので対応可能) |
登記申請書 | 法務局へ提出する建物の概要を記載するための書類(自身で申請する場合、インターネットなどから入手して記入・提出) |
場合により追加で書類が必要となるケースもありますが、主に必要となる書類は上記の通りです。基本的には専門家の協力のもと進めることが推奨されますが、自身で申請を行う場合には法務局の登記相談窓口へ赴き、作成した書類を持参して確認してもらうと良いでしょう。
所有権保存登記にかかる費用と主な必要書類
建物の新築後、表題登記を行ったあとに必要となるのが所有権保存登記です。
建築後1ヶ月に行わなければならない表題登記とは異なり、所有権保存登記には期限も罰則もありません。建物の所有権を法的に明確化するために行うものであり、その物件をめぐって他人と所有権を争うなどの状況でない限り登記をしなくても深刻な支障はありません。
ただし、新築住宅の建設・購入のために住宅ローンを組むとき必要となる抵当権設定登記は、前提として所有権保存登記が必要となります。そのため、一般的には大半のケースで所有権保存登記を行います。
所有権保存登記は司法書士へ依頼して進める流れが一般的であり、依頼にかかる費用は平均するとおおむね5万円前後です。
このほか、表題登記とは違い所有権保存登記には登録免許税がかかります。所有権保存登記を行う場合に生じる登録免許税額は「不動産価額×0.4%(住宅の要件により軽減措置あり)」を掛けた金額です。
また今回ご紹介した表題登記・所有権保存登記は建物に関するものですが、家を新築するにあたり土地を購入した場合、土地に関しては「所有権移転登記」を行うことになります。土地にかかる登録免許税は「土地の固定資産税評価額×2%」となるため、こちらも念頭に置いておきましょう。
所有権保存登記に用いる書類は建築確認書や検査済証、工事完了引渡証明書や建物図面など表題登記の際に用意する書類と被りますが、登録免許税の軽減を受ける場合は別途「住宅用家屋証明書」が必要となります。住宅用家屋証明書は、以下の条件を満たす場合に役所で取得できます。
- 個人が新築・取得した住宅用家屋である
- 新築・取得後1年以内に登記する家屋である
- 個人が自己の居住の用に供する家屋である
- 床面積が50㎡以上である(併用住宅なら居住部分の床面積が90%超である)
- 区分建物の場合は耐火建築物・準耐火建築物・低層集合住宅のいずれかである
上記の条件を満たし、かつ長期優良住宅や低炭素住宅の場合は「認定申請書の副本」と「認定通知書の写し」を用意する……などいくつかの要件があり、各ケースにより必要となる準備物に差があるためあらかじめ管轄の自治体のホームページなどで確認することをおすすめします。
住所変更はいつ必要?用意する費用や書類
住民票の異動は引越しから14日以内に行わなければならず、正当な理由なく住所変更の届出をしなかった場合には5万円以下の過料を科せられます。
また「自治体から新居へ郵便物が届かない」や「新住所で公的書類を発行できない」といった不便な事態も起こるため、事前に手順を確認して速やかに対応できるよう予習しておくことをおすすめします。
なお「新住所と旧住所の自治体が異なる場合」と「新住所と旧住所の自治体が同じ場合」では届出が変わるため、各ケースに応じた手続きの進め方を把握しておきましょう。
新住所と旧住所の自治体が異なる場合
新住所の自治体が旧住所の自治体と異なる場合、あらかじめ旧住所の役場で「転出届」を提出しておく必要があります。この際に受け取る「転出証明書」は、新居への引越しを済ませたあと転入届を提出するときに必要となるため、大切に保管しておきましょう。
自治体によっては土曜日・日曜日も転出届の提出を受け付けているほか、転出届は郵送で提出することも可能です。ただ、郵送の場合は転出証明書が返送されるまでに数日~1週間程度のタイムラグがあるため、提出するタイミングには気を付けてください。
その後、新居への引越しが完了した際には、引越しをしてから14日以内に役場で「転入届」を提出します。この際には、事前に受け取っていた転出証明書を持参してください。
また新住所と旧住所の自治体が違う場合は、事前に旧住所が属する役所で印鑑登録の廃止手続きも行っておく必要があります。
新住所と旧住所の自治体が同じ場合
新住所と旧住所の自治体が同じケースでは、転出届の提出は不要です。ただし転入届と同様、引越し後14日以内に「転居届」を提出する必要があります。
ここまでに解説した転出届・転入届・転居届は、いずれも引越しをする本人や世帯主、同一世帯の人が行うことになっていますが、委任状などの必要書類を別途用意することで代理人による提出が可能です。
何らかの事情で手続きが難しくなった場合には、代理人への依頼も検討してみてください。
その他の住所関係の手続き一覧
住所変更は転入届や転居届を提出すれば完了しますが、実際には住所変更にともない発生する以下のような住所関係の手続きが必要となります。主な項目とそれらを行う場所、期限についてまとめているので住所変更後の対応にお役立てください。
手続きを行う場所 | 主な手続き(引越し後の手続き期限) |
役場 | l マイナンバーの住所変更(14日以内)
l 印鑑登録の住所変更(明確な期限なし) l 原付1種・2種の住所変更(15日以内) l 犬の住所変更(30日以内) |
警察署・陸運局 | l 運転免許証の住所変更(明確な期限なし)
l 車庫証明の住所変更(15日以内) l 自動車の住所変更(15日以内) l 軽二輪・小型二輪の住所変更(15日以内) |
その他 | l 銀行関連の住所変更
l クレジットカード関連の住所変更 l 国民年金の住所変更 ※第1号被保険者の場合 l 国民健康保険の住所変更 ※第1号被保険者の場合 |
上記のほか、利用している保険や通販サイトなど住所情報を提出するあらゆるサービスの変更手続きや、勤務先への報告も忘れずに行いましょう。
まとめ
今回は、新しい家の購入後に必要となる不動産登記と住所変更について解説しました。不動産登記のうち表題登記と、旧住所から新住所へ移った際の住所変更は法律で義務付けられているため、面倒だからと先延ばしにせず速やかに対応することを強くおすすめします。
また今回ご説明したポイントは多くのケースに当てはまる「一般的な対応」であるため、特殊な条件下で家を新築・取得する場合には一度専門家へ相談することも検討してみてください。