マイホーム購入に影響?住宅ローン控除改正で控除額や控除率はどう変わった?(住宅の種類ごと、制度の適用期限、控除率、減税期間、所得上限など他)
目次
住宅ローン控除とは
2022年住宅ローン控除改正で何がどう変わった?
控除率の改正
控除年数の改正
借入限度額の改正
所得要件の改正
住宅ローン控除改正後のメリット
住宅ローン控除改正後のデメリット
住宅ローン控除の申請方法
1年目は確定申告の手続きが必要
2年目からは年末調整での申告が可能
改正された住宅ローン控除をうまく活用するには?
控除対象となる残高まで繰上げ返済
金利0.7%以下は繰り上げ返済せず14年目以降にする
金利0.7%以上なら1月に繰り上げ返済する
まとめ
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、家を購入・リフォームする人がローンを組んだ時に利用できる制度です。
住宅ローンの返済額に応じて、所得税や住民税を安くできるのです。
住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」と呼ばれ、国の制度では「住宅ローン減税」とも表現されます。
2021年までの住宅ローン控除では、年末時点のローン残高の1%相当が、その年に納税した所得税から控除されます。
控除額は、年間最大40万円(認定長期優良住宅などは50万円、個人間売買の中古住宅は20万円)です。
また、所得税から控除しきれない金額は、課税総所得金額の7%を限度として最大136,500円が住民税からも控除できます。
控除期間は、最大10年となり最終的には最大で400万円(認定長期優良住宅などは500万円、消費税が非課税の中古住宅は200万円)が控除される仕組みです。
しかし、この制度は控除額が金利を超えてしまうという逆ざや問題がありました。
例えば、5000万を0.5%で借りていて、金利は年25万なのに、40万円も税控除が受けれてしまいます。
つまり、金利額よりも控除額の方が多く戻ってくるという、ローンを払っている人からしたらかなりの「お得」でした。
しかし、この現状に政府が疑問視し住宅ローン控除の改正が行われたのが背景です。
2022年の住宅ローン控除改正では、控除率や控除期間などが大きく変わりました。
この項目では、より詳しい改正内容を解説していきましょう。
控除率の改正
住宅ローン控除率は、2021年の1%から2022年以降では0.7%に引き下げられます。
これは、先ほども解説した「逆ざや」を解消するための改正です。
住宅ローンの低金利化が進み、今までの1%減税以上の控除を受けられてしまうのは、本来の減税目的とは異なっています。
そのため、現代の金利状況に見合った控除率改正になりました。
控除年数の改正
控除率が下がったとは言え、2022年以降の制度では控除期間が2021年の10年から13年に延長されました。
3年の延長により、引き下がった分の控除率を補う目的があります。
ただし、中古住宅の場合は延長の対象外となり、控除期間は10年間と変更がありませんので、ご注意ください。
借入限度額の改正
2021年の住宅ローン控除制度の対象となる借入額は「年間4,000万円」が上限でした。
また、業者を通さずに個人間で住宅を購入したときは「年間2,000万円」、長期優良住宅や低炭素住宅を購入した時は「年間5,000万円」がそれぞれ借入額の上限でした。
改定後2022年以降の借入限度額は、以下のように住宅の種類や入居のタイミングによって変わります。
2022〜2023年に入居 | 2024〜2025年に入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円
※2023年までに新築の建築確認がされていた場合は2,000万円 |
所得要件の改正
改正前の住宅ローン控除の対象所得は、年間の合計所得金額が3,000万円以下でした。
2022年の改正後は、合計所得金額が2,000万円以下に引き下げられています。
そのため、住宅ローン控除を受けられない人の割合が増えてしまうのです。
住宅ローン控除改正後のメリット
住宅ローン控除改正後のメリットは、以下の3つです。
- 控除期間が10年から13年に延長される
- 借入限度額が住宅の種類・性能によって異なる
- 控除対象の入居時期が2025年まで延長された
住宅ローン控除が改正された最大のメリットは、控除期間が3年間延長になったことでしょう。
また、借入限度額が住宅の種類によって幅広く選択肢が増えたこともメリットです。
そして、控除対象の入居時期が2025年12月末までに延長されたことで、これからマイホームを購入しようと思っている人も前向きに検討できます。
住宅ローン控除改正後のデメリット
住宅ローン控除改正後のデメリットは、以下の4つです。
- 控除率の引き下げ
- 所得制限の引き下げ
- 住民税の控除率引き下げ
- その他の住宅は控除対象外
例えば、3,000万円を住宅ローンとして借入した場合、2021年の控除額は10年間で300万円の控除です。
2022年の改正後は、3年間延長されたとはいえ控除合計額は13年間で273万円と少なくなります。
他にも、所得制限の引き下げも、住宅ローン控除の対象者を狭める改悪だといえるでしょう。
また、所得税控除後は住民税からも控除を受けることができますが、その上限が最大13万6,500円から最大9万7,500円までに引き下げられました。
そして、優良や省エネ基準を満たしていないその他の住宅は、2023年までに新築で建築確認を受けていないと住宅ローン控除の対象外となってしまいます。
住宅ローン控除の申請方法
住宅ローン控除の申請方法は、初年度と2年目でそれぞれ異なります。
ここでは、住宅ローンの控除の申請方法を見ていきましょう。
1年目は確定申告の手続きが必要
住宅ローン控除を受ける1年目は、会社員であっても確定申告の手続きが必要です。
理由としては、会社でできる年末調整の簡易的な申告だけでは、控除申請の手続きができないからです。
住宅ローン控除を受けるための確定申告のタイミングは、居住を開始した翌年の2月から始まる確定申告期間中に申告をします。
確定申告をする際は、以下の書類が必要です。
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 取得した不動産の登記簿謄本
- 不動産の売買契約書または工事請負契約書
- マイナンバーカードまたは通知カードと本人確認書類
- 源泉徴収票
2年目からは年末調整での申告が可能
会社員の場合、2年目以降のローン控除申請は会社の年末調整だけで申請が可能です。
銀行などの借入機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を年末調整に添付して、会社に提出します。
年末調整で、提出を忘れた場合は確定申告をすることで、5年前まで遡って控除申請をすることが可能です。
改正された住宅ローン控除をうまく活用するには?
改正された住宅ローン控除をうまく活用するポイントは、以下の3つです。
- 控除対象となる残高まで繰上げ返済
- 金利0.7%以下は繰り上げ返済せず14年目以降にする
- 金利0.7%以上なら1月に繰り上げ返済する
控除対象となる残高まで繰上げ返済
住宅ローン控除の対象となる限度額は、省エネ基準適合住宅の場合4,000万円です。
それ以上の借入金額は、控除の対象とはならないので早めに繰上げ返済をした方が、金利負担も少なくなります。
しかし、早く返済した方がいいと言っても生活費に必要な資金まで削ってしまっては、本末転倒です。
繰上げ返済は、あくまで無理のないように計画的に行いましょう。
金利0.7%以下は繰り上げ返済せず14年目以降にする
金利が0.7%を下回る場合は、金利よりも住宅ローン控除で戻ってくる割合の方が多いです。
そのため、金利が0.7%以下の場合は急いで繰上げ返済をする必要はなく、13年間の控除期間が終わった14年目以降にしましょう。
金利0.7%以上なら1月に繰り上げ返済する
現在の金利動向では、35年の固定金利だと0.7%を超えてくることがほとんどです。
そのため、戻ってくる控除額よりも金利を多く払っています。
この場合は、早めに繰り上げ返済をするべきです。
ただし、住宅ローン控除は12月末の住宅ローン残高を元に計算しているので、繰り上げ返済をするのは控除額が確定した後の1月にするようにしましょう。
まとめ
今回は、2022年の住宅ローン控除制度の改訂内容やメリットデメリット、改訂制度の活用方法について解説していきました。
住宅ローン控除制度は、マイホームの購入を検討している人にとっては欠かせない制度です。
今回の制度内容の改訂をきっかけに、改めて住宅ローン控除について考えてみましょう。