戸建て新築時に迷いがちな「駐車場はカーポート?ガレージ?」を解決

戸建ての新築時、自宅の内外装とは違った意味で「どこまでこだわるべきか」と迷いやすいのが駐車場です。

本記事ではカーポートとガレージを比較解説し、それぞれの特徴や税金・法律的な違いを紹介します。戸建ての新築前に「我が家のケースでは、カーポートとガレージのどちらが向いているのか」と考える際の参考にしてみてください。

カーポートとガレージの違い

自動車を保有している世帯の場合、戸建ての新築時にはほぼ必ず「駐車場をどうするか」という問題が浮上します。

野ざらしの駐車場を除けば、戸建ての駐車場はカーポートとガレージが主な選択肢となるため、この2択にどのような違いがあるのか確認していきましょう。

カーポートのメリット・デメリット

簡単な屋根と柱で作られた簡易の車庫であるカーポートには、主に以下のメリットとデメリットがあります。

カーポートのメリット カーポートのデメリット
l  短期間で設置できる

l  比較的、安価で設置できる

l  撤去にかかるコストが小さい

l  風雨を完全に防げない

l  ガレージと比較すると耐久性が低い

l  厳重な囲いではないため防犯性能は低い

カーポートは、完全に外へさらされた駐車場よりも風雨を防ぎやすく、ガレージに比べて工期や費用面で早く安く仕上がります。大きさや素材にもよりますが、ほとんどの場合は数十万円の予算に収まります。

自動車を完璧に守ることはできませんが、手軽に最低限の保護ができるという点でコストパフォーマンスの高い選択肢だといえるでしょう。

なお、カーポートは屋根と柱から構成されていますが、柱の位置は「左右どちらか一方」「左右両方」「駐車スペースの後方」などさまざまなパターンがあります。運転が苦手であれば、柱の位置が左右どちらか一方、あるいは駐車スペースの後方のタイプを選ぶことで接触事故を減らせるでしょう。

ガレージのメリット・デメリット

しっかりとした屋根と、3方向以上の壁で覆われた駐車場であるガレージには、主に以下のメリットとデメリットがあります。

ガレージのメリット ガレージのデメリット
l  風雨や紫外線をほぼ完全に遮断

l  シャッターや鍵により防犯性能は高い

l  工具置きや作業場所として活用できる

l  設置費用が100万円以上かかることも

l  カーポートより広い面積が必要

l  撤去にかかるコストが大きい

3方向を壁に囲まれるため、カーポートよりも駐車に技術が求められますが、自動車を安全かつ綺麗に管理する観点では優れています。

なお、家の1階にガレージを組み込んだガレージハウス(別名:ビルドインガレージ、インナーガレージ)の場合、上記に加えて「家と駐車場が接続されるため子育てや介護時の乗り降りが楽になる」や「雨の日に濡れることなく車に乗れる」といったメリットがあります。

自宅の隣に設置するタイプのガレージであれば、一旦自宅から出てシャッターを開いてから車庫へ入る必要がありますが、その手間がなくなるのです。

ただし、ガレージハウスは1階部分が駐車場になることから、必然的に居住スペースが2階や3階となります。自宅とは切り離された位置のガレージとは使い勝手が異なるため、通常のガレージとガレージハウスは別物として考えた方が良いでしょう。

駐車場の大きさを決める際の注意点

駐車場の横幅や奥行が小さいほど入出庫は難しくなり、壁や柱への衝突が起こりやすくなります。また自動車の乗り降りの際、窮屈な駐車場ではドアの開閉をスムーズに行えない場合があります。

車種が変われば必要なスペースも変わりますし、想定される最大駐車台数によっても適切な駐車場の面積は異なるでしょう。それらを踏まえて、下記の目安を基準にゆとりある設計の駐車場とすることをおすすめします。

  • 横幅は「車幅+100~150cm」
  • 高さは「車高+50~100cm」
  • 奥行は「全長+80~100cm」

また、基本的に駐車場に対してカーブを描きながら出入りするため、接している道路が細いほどカーブを描きやすいように駐車場の間口を広くしなければなりません。

このほか、自動車を道路と平行にとめる「幅寄せ式」の車庫の場合、間口の広さは自動車の2倍近くとる必要があります。

前述の横幅・高さ・奥行の数字はあくまでも目安ですので、実際の車庫づくりでは自動車の種類や搭乗方法、駐車場の方式を考慮して設計を進めましょう。

自動車の車両クラス別サイズ

国土交通省が定める軽自動車・小型自動車・普通自動車の大きさは、以下の通りとなっています。

車両のクラス 車両サイズの目安
軽自動車 全幅:1,480mm以下

全長:3,400mm以下

全高:2,000mm以下

小型自動車 全幅:1,700mm以下

全長:4,700mm以下

全高:2,000mm以上

普通自動車 全幅:1,701mm以上

全長:4,701mm以上

全高:2,001mm以上

参考:国土交通省「自動車の種類

広く認知されている国産車を例にすると、2018年発売モデルのトヨタプリウスであれば、外寸は全幅1,760mm・全長4,575mm・全高1,470mmとなっており、全幅のみ小型自動車の基準を上回る程度のサイズ感となっています。

7~8人乗りのファミリーカーとして、家族世帯で定番となったミニバンの1つであるトヨタノアの場合、全幅1,730mm・全長4,695mm・全高1,895~1,925mmとなっており、全長と全高がプリウスよりやや大きくなっていることが読み取れます。

上記を比較して「全幅はノアよりもプリウスの方が大きいのか」と意外さを覚えた方は少なくないはずです。また案外、全長に関してもそれぞれ10cm程度しか差がありません。

実際の寸法を調べずイメージだけで駐車場を設計すると、駐車場が想定外に大きく感じたり、小さく感じたりする可能性があるため注意したいところです。

カーポートとガレージに固定資産税はかかる?

「カーポートを設置すると固定資産税がかかるのか」と気にする声は珍しくありませんが、基本的にカーポートは固定資産税の対象になりません。というのも、固定資産税の課税対象となる建物は、以下の条件を満たしたものが該当するからです。

  • 3方向以上に壁があり、屋根があるもの
  • 居住・作業・貯蔵などの用途に利用できる状態のもの
  • 基礎などにより土地に固定されて、容易に移動できないもの

上記の要件は、それぞれ上から順番に「外気分断性・用途性・土地定着性」と呼ばれます。一般的なカーポートが上記の条件に合致する可能性は低いため、カーポートは固定資産税の対象にならない場合が大半です。

一方、ガレージは先ほどの条件を満たすため、原則として固定資産税の対象となります。またシャッターの駆動方式や材質、ドアや窓の有無によっても固定資産税額が変わる場合がある点にご留意ください。

カーポートは建ぺい率に含まれるのか

カーポートは、建築基準法では建築物の一種に分類されます。

そのためカーポートの設置に使われた面積は「建物面積」の一部となり、その面積は建ぺい率(敷地面積における建物面積の割合)の計算に含まれることになるのです。これにより、カーポートの専有面積が広くなるほど、家の建物部分に使える面積が狭くなってしまいます。

しかし、カーポートに適用される緩和措置の条件を満たせば、建物面積の不算入措置の対象となり建ぺい率を圧迫せずにカーポートを設置できます。その条件は以下の4つです。

  • 外壁を有しない部分が連続して4メートル以上である
  • 柱同士の間隔が2メートル以上である
  • 天井の高さが1メートル以上である
  • 地階を除く階数が1である(1階建てである)

上記の4つを満たすカーポートは緩和措置の対象となるため、事前に条件を把握したうえで設置すれば要件のクリアは難しくありません。

新築後にカーポートを新設した結果、建ぺい率の規定を超えた場合には見過ごされるケースもあるようですが、近隣の通報などをきっかけに違法状態が発覚する可能性もあります。無用なトラブルを避けるためにも、カーポートを設置する場合には緩和措置を活用したいところです。

まとめ

戸建ての新築時、カーポートとガレージはどちらも有力な選択肢となりますが、総合的に見るとそれぞれ以下のように向き・不向きが分かれます。

カーポートが向いている人 ガレージが向いている人
できる限り金銭的な負担を抑えつつ、自動車を最低限の風雨から守れれば十分な人 多少予算や維持費が増えたとしても、風雨や盗難に遭うリスクを減らしたい人

設置費用や固定資産税の観点では、カーポートに軍配が挙がります。一方、風雨や盗難にさらされる機会を減らしたり、駐車場と作業場を両立できる空間が欲しかったりする場合には、ガレージが最有力な選択肢となります。

それぞれに一長一短があるため、自宅における自家用車との向き合い方を加味したうえで、後悔の少ない選択を検討してみてください。