地球温暖化による夏の異常な暑さに対策を!戸建てを建てる前・後にできる対策一覧

近年、地球温暖化の影響からか、夏場は毎年のように異常な暑さが私たちを襲うようになりました。そのため過去5年以上にわたり、5月から9月までのあいだだけでも毎年4万~9万人ほどの熱中症患者が救急搬送されています。

しかも「住居」で熱中症にかかり搬送される人の割合がもっとも多いのです。このことから、暑さ対策が不十分な家は危険エリアになるのだと分かります。ぜひ、これから戸建てを建てる方は、本記事を参考にして可能な限りの暑さ対策を講じてみてください。

室内が暑くなる主な原因は?

あらためて、夏場に室内が暑くなる原因を挙げました。

  • 屋外から日光が差し込みやすい
  • 換気不足で熱を逃がせていない
  • 建材の特性により熱が逃げにくい
  • 一階から二階に暖気が流れている
  • 断熱材が適切に効果を発揮していない

多くの場合、これらの原因が組み合わさることで室温が上がり、夏場の蒸し暑さが顕著に感じられます。

また近年では戸建てでもRC(鉄筋コンクリート)造を採用している場合がありますが、RC造の住居は一度部屋が暖まるとなかなか冷えず、昼間にため込んだ熱を夜に放出するため、一日を通じてずっと暑いことも珍しくありません。

このほか、冷房等により部屋は冷えているものの、屋根が高温状態になることで部屋の高い位置だけは温度が下がらず、足ばかり冷えて頭は暑いという不快な状況もよく起こる現象です。

戸建てに取り入れたい効果的な暑さ対策

「強めに空調を効かせる」以外にも、夏場の室内を涼しくする方法は複数あります。

  • 外部建材の塗料・色を工夫する
  • 複数の方角に窓を設置する
  • 屋外から熱を遮る
  • 断熱材を隙間なく施工してもらう
  • 窓部分に遮熱対策を施す
  • サーキュレーターやシーリングファンを活用する

戸建てを新築する際に取り入れられる暑さ対策だけでなく、いざ住んでみて暑さ対策が不十分だと感じたときに実践できる方法も紹介していきますので、無理なく取り入れられるものから検討してみてください。

外部建材の塗料・色を工夫する

暑さ対策を重要視する場合、外装の塗料は「遮熱塗料」を選ぶことになります。

このとき、塗料の色にも注目してください。塗料の種類が同じであっても屋根材や外壁材の色が変わると「日射反射率」が変動し、室温に影響するからです。

基本的には黒に近づくほど日射反射率が低くなり、白に近づくほど日射反射率は高くなります。日射反射率が上がるほど近赤外領域の光をよく反射し、日光が当たったときの温度上昇を抑えられるため、できる限り明度が高い色を選んだ方が暑さ対策には効果的です。

複数の方角に窓を設置する

暖気がこもった部屋はまず換気すべきなのですが、そもそも窓がなかったり部屋に窓が1つだけだったりする場合、暖まった空気を効率的に外へ逃がせません。

換気をしなくても冷房を使えば強引に室温を下げられますが、蒸し暑い部屋を換気してから冷房を使う方が、効率良く部屋を冷やせます。このことからも、屋外に面する部屋は複数の方角に窓を設置するのが理想です。

ただし、時間帯次第で日光が直接差し込む東西に関しては、窓を大きくすると強い日差しが入り部屋が暖まりやすくなります。換気のために複数の方角に窓を設置する際には、それぞれの日差しの強さを考慮して窓の大きさを調整しましょう。

屋外から熱を遮る

意外にも見落としがちですが、自宅へ入ってくる熱を遮るために屋外に遮熱対策を施すのはとても有効です。

具体的には、地面からの照り返しを抑えるために家の周囲を芝生やウッドデッキに変えたり、屋外にアウターシェードを設置して日光を遮断したりといった対策が挙げられます。アウターシェードとは、一般的に以下のような洋風のすだれを指します。

画像:YKK AP株式会社「アウターシェード

YKK AP株式会社の公開情報によると、アウターシェードの取り付けにより日差しを窓の外で

窓部分の安価な日除け対策といえば遮熱カーテンをイメージしますが、アウターシェードは「窓の外側」で日光を遮断できるため、窓の内側で遮るカーテンよりも効果的に室温上昇を防げます。

またアウターシェードが自宅のテイストに合わない場合は、より和の印象が強い簾(すだれ)や葦簀(よしず)を選んでも良いでしょう。

アウターシェードよりも日光を遮る効果は劣りますが、簾や葦簀そのものに水をかけることで窓から部屋に入る外気を冷やすことができます。猛暑日以外、窓を開けて過ごす機会が多い場合には、簾や葦簀も有力候補の1つに挙がります。

断熱材を隙間なく施工してもらう

近年の新築であれば、ほぼ例外なく断熱材が入っています。にもかかわらず夏場に室温がどんどん上昇する理由としては、以下が考えられます。

  • 雑な断熱材の施工により隙間ができている
  • 断熱材が入っている場所が少ない
  • 断熱材が薄いため効果が弱い

上記のケースでは屋外から入る熱を完全には防げず、さらに断熱材の効果で室内の熱が屋外に逃げにくいため、一度室温が上がると暑いままになりやすいのです。そのため、熱の入口となりやすい屋根や天井を含め、隙間なく断熱材を入れてもらえるように要望を出しましょう。

窓部分に遮熱対策を施す

家屋に隙間なく断熱材を入れたとしても、窓から入ってくる熱をシャットアウトしなければ部屋の温度を抑えられません。むしろ、隙間なく敷き詰めた断熱材により、部屋の熱気が外へ逃げにくい状態になるのです。

日本建材・住宅設備産業協会のデータによれば、1枚ガラスの窓の場合、夏場には外気の熱の71%が室内に移動してくるとのこと。そのため、夏場の快適な空間づくりを目指すのであれば、窓へ遮熱対策を施すことは必須だといえます。

  • 断熱性能の高い窓を採用する
  • 内窓を増設して2枚ガラスにする
  • 窓に断熱シートを貼る
  • 断熱性の高いカーテンを設置する

予算に余裕がある場合にはそれぞれの対策を組み合わせ、予算を抑えたい場合には後者2つを検討してみてください。

これらの対策を講じることで夏場の快適性が上がることはもちろん、冬場も室内の熱が外に逃げなくなるため部屋の暖かさが保たれます。冷暖房の稼働が最小限になり、節電効果も期待できるため費用対効果の高い施策だといえるでしょう。

サーキュレーターやシーリングファンを活用する

いまでも一定数「安易に冷房設備に頼ることなく過ごそう」といった風潮が見られる場面もありますが、多少の工夫で暑さを凌げたひと昔前と現代の夏は気温がまるで違います。

節電に配慮することも大切ですが、熱中症で倒れてしまっては元も子もないので、暑い日には我慢せずしっかりと冷房設備を稼働させることが大切です。

また冷房設備を稼働させるとき、効率的に冷気を循環させる方法として、サーキュレーターやシーリングファンの活用が挙げられます。それぞれ手軽に設置できるため、大掛かりな工事や交換などができない場面でも導入できます。

消防庁が公開している救急搬送状況の資料によると、2021年5月から9月までに全国で47,877人の熱中症患者が救急搬送されました。

出典:消防庁「令和3年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況

そして、熱中症による救急搬送がもっとも多く発生する場所は「住居」です。救急搬送されたケースのうち、全体の4割程度が住まいで症状を発症しているのです。

  • 節電を意識しすぎて冷房を十分に活用できていない
  • 屋外での活動後に室内で十分に体を冷やせていない
  • 夜間に冷房を切り、睡眠中に熱中症になってしまう

上記のような状況に陥り、自宅で熱中症になるケースは珍しくないため、サーキュレーターやシーリングファンと冷房を組み合わせて、健康に害がない程度に室内を冷やすよう心がけましょう。

まとめ

地球温暖化の影響により、世界の平均温度は上昇する一方だと考えられています。衣服を工夫したり、扇風機を使ったりするだけでは対処できない暑さが続いているので、まずは外壁や屋根、窓から「暑さを遮る家づくり」を検討してみてください。

そのうえでアウターシェードや遮熱カーテンを導入し、冷房設備をしっかり活用して快適な夏を過ごせるよう準備しましょう。

暑さ対策を充実させることで予算は多少膨らみますが、家族の健康とお金を天秤にかければ決して高い買い物とはいえません。重度の熱中症になれば入院して集中治療を受けなければならず、数万円の治療費が発生するほか、場合によっては意識障害や運動障害をともないます。

最悪の事態を未然に防ぐため、しっかりと暑さ対策を講じて猛暑に備えてください。