脱炭素の取り組みで今後の新築住宅事情も変わる。

2020年10月に発表された「カーボンニュートラル宣言」、これは、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指した政府による宣言です。この宣言により、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方検討会」において、2050年までのロードマップが公表されました。

脱炭素社会に実現に向けて新築住宅はどのように変化していくのでしょうか。未来の住宅事情を踏まえて「住宅のあり方」について解説します。

住宅業界の将来的な動き

政府のカーボンニュートラル宣言に合わせて、住宅業界では次の2つの目標が設定されました。

・2030年までに新築の住宅、建築物はZEH(ゼッチ)、ZEB(ゼブ)基準に匹敵する省エネ性能が確保され、新築住宅の6割に太陽光発電設備の設置

・2050年頃にはZEH、ZEB基準の省エネ水準が確保、住宅、建築物において太陽光発電設備等の再生可能エネルギーの導入が一般的になる

今後住宅業界では上記の基準を達成するために、自治体や国と連携をしながらさまざまなアクションが考えられます。

具体的なアクションとしては、従来の建物の取り壊しです。エネルギー効率の高い最先端技術を保有した住宅が国内の半数以上を占め、今建てられている建物の中には基準を満たさないものもあり、取り壊しなどが予想されます。

今、新築住宅を建築する際、カーボンニュートラルの基準を満たすことができない建物は2050年の基準を満たすために、リフォームや設備投資などが求められます。

今後主流になる住宅は

今後、住宅業界ではカーボンニュートラルに向けた目標を達成するために、さまざまな動きが見られる可能性があります。

鍵を握るのは、ZEH、ZEB基準の建物です。将来的には、ZEH、ZEBの基準を満たす住宅が当たり前になります。2つの基準を満たす建物とは、どのような建物かについて解説します。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の建物とは

ZEH基準の住宅は、エネルギー効率が良く住宅で使用する年間の一次エネルギー消費の収支がゼロの住宅を指します。エネルギー効率を達成するだけでなはなく、「強化外皮基準」をクリアした建物で、資材も省エネ基準で定められているものに比べワンランクのものを使用しなければZEH基準を満たした建物とは言えません。

ZEH基準の建物は、建築費が高くなる傾向にあるので、現在は補助金制度を利用することが可能です。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準の建物とは

ZEBは、快適な環境を実現しながら建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることができる建物を指します。

ZEH住宅の建築ハードルが高い理由

脱炭素社会実現に向けて将来的なことを考えれば、取り壊しやリフォームをする必要のないZEH住宅を建築すべきですが、今ZEH住宅にはさまざまな問題を抱えています。これからZEH住宅を新築で建築しようとしている方は、以下の問題があることについても認識しておきましょう。

ZEH住宅を建てられる工務店は少ない

ZEH基準の省エネ環境の基準を満たす建物を建てられる工務店が限られています。大手の工務店であれば対応が可能ですが、中小工務店の中には、設置するためにどのような手順が必要なのか、工法を深く理解していないこともあります。結果的に技術力が足りずZEH住宅の建設が難しい場合もあります。

2022年現在建築すると赤字になる

ZEH住宅は国からの補助金制度を利用することができます。しかし補助金は限定的で、補助金を利用できたとしても、資材価格の高騰により建築コストが高くなってしまう可能性があります。仮にZEH仕様の住宅を建てることができても、従来の予算よりも費用が高くなってしまうため、今建築することを見合わせているケースもあります。

目標を達成しない

日本人は省エネに対する理解が不足しているとも言われています。その理由はエネルギー効率の良い建物を建てるよりも、自分の生活で何らかの「我慢」をして省エネに貢献した方が良いと考えるためです。

節約がうまい日本人は暖房を使用するのではなく、厚着をして冬の寒さを防ぎます。このような家庭が多いため、省エネ効率化の住宅を推進しても、メリットを感じられずに新築にエネルギー効率を求めている方が一定しかいないという問題もあります。

補助金が限定的

補助金制度を利用するといっても、全ての事業者に認定されるわけではありません。申請から入金まで時間がかかり、公募期間に提出しないと補助金が降りないこともあります。

ZEH住宅の補助金を利用して建築を検討しているのであれば、事前にスケジュールと補助金申請タイミングを工務店と連携して設定する必要があります。

さらに、補助金制度は年々見直しが行われます。事業の進捗状況や経済状況によっては今後補助金が減額されてしまう可能性もあります。

技術が刷新される度に新たな住宅が登場する

技術の刷新により、ZEH住宅以上の住宅がたくさん登場します。実際に、 ZEH住宅以上のエネルギー効率を持った住宅「ZEH+」、その上の設備を備えている「ZEH+R」という住宅もあります。

2050年頃にはさらに技術革新が進み、エネルギー効率化した住宅を低コストで建てることができる可能性もあります。

脱炭素社会に向けてできること

脱炭素社会に向けて、私たちができることは一体どのようなことがあるのでしょうか。今から考えられる対策や今後の参考になる考え方を紹介します。

時期を見極めて検討をする

脱炭素社会に向けたエネルギー効率化の住宅は、持続可能性な社会に向けては必要不可欠な建物ですが、あくまで「ロードマップ」なので、計画が変更も十分考えられます。

現状円安が加速し、資材の高騰による建築価格の高騰時に建てるよりも、価格が落ち着いたタイミングで建てる方法もあります。導入までのハードルが現時点では誰もができるのではなく、特定の顧客に限られているとも言えないので注意が必要です。

ZEH住宅は、建築価格が高いデメリットがありますが、エネルギー効率化の住宅が進めば、長時間冷房をつけても電気代をある程度抑えることができ、冬も快適な環境で過ごすことが期待できます。

太陽光発電設備の導入は前向きに検討

電気代をはじめとした光熱費の高騰は、今後も長期的に続く可能性があります。新築住宅を検討しているのであれば、ZEH住宅でなくても、太陽光発電設備を備えておくことをおすすめします。

太陽光発電設備を設置することで、自宅で消費する一部のエネルギーを賄い結果的に年間の光熱費の低下につなげることが可能です。太陽光発電設備の導入はさまざまな設備が充実し、自治体の補助金の利用が可能なためZEH住宅よりも簡単に導入ができます。

長期的な視野で導入を検討する

新築住宅を検討する際は、政府の方針に左右されるのではなく長期的な視野で検討することが大切です。

特に新築の建物は人によってはその家に一生住むことになります。脱炭素社会のためにZEH住宅でなければならないと考えるのではなく、現行の制度で必要な設備は何か、新築時に設置しておきたい設備と、リフォーム時に検討する設備は何か、予算の範囲内でできる脱炭素化社会に貢献する試みは何かを考えましょう。

まとめ

脱炭素化社会に向けて、今後もさまざまな住宅業界の変化が起きることが考えられます。補助金制度の充実で簡単にエネルギー効率化の住宅を建てることが可能になるかもしれません。

大切なことは、情報収集して何がベストなのかを検討しておくことです。ZEH住宅に限らず理想の建物を建てる際には情報が重要になります。

引用部分

https://suumo.jp/journal/2021/09/01/182269/

https://toyokeizai.net/articles/-/416975?page=4

https://www.soken-home.jp/media/detail/post-7033/