角地はベストな選択?メリットとデメリット、角地緩和や隅切りについて解説
土地の2面が道路に面している「角地」は、両脇を建物に挟まれない家づくりができるため人気です。ただし「日当たりが良く開放感があるから新築は角地に建てたい」という意見が多い一方で、角地にはデメリットもあります。
ここでは、あらためて角地のメリットやデメリットを整理し、角地の購入を検討するときに確認すべきポイントをまとめました。「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、土地選びを始めるまえに本記事をご一読ください。
角地のメリット
角地を購入する主なメリットは4つです。
- 日当たりが良く開放感がある
- 比較的自由に間取りを設計できる
- 建ぺい率の角地緩和が適用される
- 人気があり資産価値が下がりにくい
角地の購入を検討する際には、上記4つと後述するデメリットを考慮し、理想の家づくりにマッチした判断を下す心がけが求められます。
日当たりが良く開放感がある
角地は通常の土地よりも周囲を遮るものが少ないため、日当たりが良い傾向にあります。また左右と後ろを建物に囲まれている場合と比較し、風通しが良いことも相まって開放感のある家づくりが可能です。
比較的自由に間取りを設計できる
一般的に、土地に面している道路がある方角に玄関を作ります。そのため、道路に接する部分が1面しかない通常の土地は、玄関の向きの選択肢が1つしかないのです。
一方、角地は道路に接する部分が2面あるため、玄関の向きに選択の余地があります。玄関の向きを変えることで間取りをガラリと変えられるため、角地に家を建てる方が間取りの自由度は高いといえます。
建ぺい率の角地緩和が適用される
建ぺい率は、敷地面積における建物面積の割合です。建ぺい率の上限は都市計画に基づいて地域ごとに設けられており、原則として建ぺい率の上限を超える住宅は建築できません。
しかし、特定の要件を満たした角地には「角地緩和」が適用され、通常の土地に比べて建ぺい率が10%加算されます。そのため通常の土地よりも、敷地面積に対する建物面積を広くできるのです。
角地緩和が適用される要件は自治体ごとに違いがあるため、角地の購入を検討する際には事前に「地域名+角地緩和」でネット検索して要件を確認しておくことをおすすめします。
人気があり資産価値が下がりにくい
ここまでに紹介したメリットは、家づくりにおいて多くの人が重視するポイントであるため、今後も「マイホームを建てるなら角地が良い」という意見を持つ人は一定数あらわれるはずです。
そのため、将来的に角地を売りに出した場合には、似た条件の通常の土地よりも購入希望者が見つかりやすく、より割高な価格で売却できると期待できます。
角地のデメリット
家づくりのために角地を購入する際、念頭に置いておくべきデメリットは以下の4つです。
- 総支出額が高くなりやすい
- 日当たりが強く暑くなりやすい
- 走行音に悩まされる可能性も
- 土地の価値が高いため税額が大きい
前述のメリットを考慮し「理想の家づくりのためには角地が必要だ」と感じた方は、こちらも必ずご一読ください。
総支出額が高くなりやすい
角地は人気があるため、周辺の土地に比べて価格が高くなりやすい傾向にあります。また土地の2面が道路に接する特性上、人の目につきやすいため、住居を建てる場合には視線を避けるフェンスや塀を設置するケースが一般的です。
そのため、土地にかかる費用や外構設置費がより多くかかることから、家づくりのために角地を購入すると総支出額が高額になりやすいといえます。
日当たりが強く暑くなりやすい
角地にある「日当たりが良い」というメリットは、地域や季節によっては「日当たりが強く暑くなりやすい」というデメリットに変わります。とくに夏場は強い日差しによる室温上昇が懸念されるため、快適な家づくりをするためには遮熱性能を意識した設計が重要となります。
走行音に悩まされる可能性も
通常の土地は1面のみ道路に接するため、自動車が横切る音は基本的に1方向のみから聞こえます。一方、角地は2面が道路に接しており、自動車が横切る音は最大2方向から聞こえます。
交通量が増える時間帯には、自動車の走行音が頻繁に屋内まで聞こえる可能性があるため、周辺エリアの交通量によっては防音対策を考えたいところです。
土地の価値が高いため税額が大きい
角地は通常の土地よりも評価額が高く、評価額をもとに算出される固定資産税や都市計画税も割高となります。土地購入や家づくりの段階だけでなく、維持に関しても通常より多くの費用がかかる土地である点には留意しなければなりません。
角地を購入するまえに確認したいポイント
メリットやデメリットとは別に、角地を購入するまえに確認すべきポイントを3つピックアップしました。
- 方角
- 隅切り
- 道路斜線制限
「土地についてこれから学んでいく」という方にとっては難しい話題が多いのですが、まずは「そういう決まりがある」のだと知っておくだけで、いざ土地購入を進めるときに出てくる専門的な説明の理解度が変わります。
方角
角地は「日当たりが良い」というメリットを持ちますが、その特性は方角によってやや異なります。以下の表に、各方角の特性をまとめました。
方角 | 方角ごとの特性 |
北西角地 | 午前~日中の日当たりは弱く、夕方が近付くにつれて西日が差し込みやすい |
北東角地 | 南向きより日当たりは弱いものの、東側から朝日を取り込みやすい |
南西角地 | 南側は一日を通して日当たりが良く、西側は夕方ごろから日が差し込みやすい |
南東角地 | 午前~日中の日当たりがもっとも良く、一般的に理想的といわれる方角 |
同程度の条件を持つ角地であれば、北西角地がもっとも価格が安くなりやすく、南東角地がもっとも価格が高い傾向にあります。
2つの方角が合わさった角地は「方角2つの特性を持つ」という特徴があるものの、基本的な方角の考え方は変わりません。時間帯や季節ごとの日当たりを重視する際は、本記事とあわせてご参照ください。
隅切り
角地の条件によっては、隅切り(すみきり)が必要となる場合があります。隅切りとは、土地の角を切り取って空き地にすることです。
隅切り部分には何も建てられないほか、空き地にするだけでなく「道路状」に整備することを求める自治体もあります。
また隅切り部分を自身で所有する場合、建ぺい率などの計算にも隅切り部分を敷地面積に含めることができますが、もし自治体に隅切り部分を買い取ってもらった場合には敷地面積から除外されます。敷地面積が狭まる分、建物面積の上限も狭まってしまうためご注意ください。
道路斜線制限
道路斜線制限とは、周囲の日照・採光・通風などを妨げないために設けられる「建物部分の高さ」に関する制限です。通常、敷地前面にある1つの道路を基準として制限が設けられますが、角地は2つの道路が基準となるため制限が厳しくなります。
イメージとしては、通常の土地は「正面の道路に建物の陰を落とさなければ大丈夫」という制限であることに対し、角地は「正面と側面(計2面)の道路に建物の陰を落とさなければ大丈夫」というように制限が加わる……といった具合です。(あくまでイメージであり、厳密にはより複雑です)
この救済手段として、以下のように建築基準法は緩和措置を設けることを定めています。
建築物の敷地が二以上の道路に接し、又は公園、広場、川若しくは海その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地とこれに接する道路若しくは隣地との高低の差が著しい場合その他特別の事情がある場合における前各項の規定の適用の緩和に関する措置は、政令で定める。
引用:e-Gov「昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法」
一定要件を満たす角地は「道路斜線の2方道路緩和」と呼ばれる緩和措置の対象となり、緩和措置がない場合に比べて建物部分を大きくできます。
角地と準角地の違いとは
角地は「縦横2本の道路」に接しており、準角地は「L字に曲がった1本の道路」に接しています。日当たりの良さや間取りの自由度などは変わりませんが、準角地は接している道路が1本であるため利便性は角地に劣ります。
その分、税額の基準となる評価額が角地よりも安くなる傾向にあるため、2本の道路と接することに大きなメリットを感じない場合には、準角地も十分に魅力的な選択肢です。
まとめ
日当たりや開放感、間取りの自由度を重視する家づくりにおいて、角地は魅力的な選択肢の1つです。ただし、購入費用や税金などの支出が大きくなりやすく、夏場は強すぎる日差しに悩む可能性があるなど、本記事で触れたようにいくつかのデメリットがあります。
「角地は良い・角地は悪い」といった意見の片方だけに耳を傾けるのではなく、どちらの側面も理解して理想の家づくりに活かせるのがベストです。