暑さ・寒さを和らげる断熱材の基礎知識を解説!種類・メリットまとめ

日本は季節の移り変わりによる気温の変化が大きく、とくに夏と冬は厳しい暑さ・寒さに悩まされます。そのため、1年を通じて快適な住環境を整えるためには、断熱材の存在が重要なのです。

ここでは暑さ・寒さを和らげ、自宅の快適性を維持できる断熱材の基礎知識をご説明します。住みやすい家づくりだけではなく、電気代節約や環境保全にもつながる事柄であるため、家づくりを検討するまえにぜひご一読ください。


断熱材の役割

断熱材の役割は、熱を遮断して屋外の暑さ・寒さから室内を守ることです。

夏は外の暑さを室内に伝えづらくする効果があり、冬は室内の熱を外に逃がさない効果があります。完全に熱を遮断することはできませんが、断熱効果によって、過ごしやすい住環境の維持や住宅の劣化防止といったメリットが生まれます。

断熱材を導入するメリット

断熱材を導入する主なメリットは、以下の4つです。

  • 1年を通じて室内を適温に保ちやすい
  • 結露による劣化・カビの発生を防げる
  • 省エネにつながり電気代が節約できる
  • 無駄な電気の消費を抑えて環境保全に貢献できる

それぞれ、どのようなメリットなのか詳しくご説明します。

1年を通じて室内を適温に保ちやすい

断熱材により断熱性能が向上することで、冷暖房設備の効果が高まるため1年を通じて室内を適温に保ちやすくなります。

「冷暖房設備による体調管理をおろそかにすべきではない」という前提を踏まえても、立地や気候によっては夏場に扇風機だけで快適に過ごせるようになったり、冬場に衣服を着こむだけで冷えを解消できたりといった効果が期待できます。

室内を適温に保つことは健康面にもメリットがあります。たとえば、血圧が上下することで起こるヒートショックは、冬場の室内における寒暖差が主な原因です。暖かい部屋から寒いトイレに移動するときや、湯船と脱衣室を行き来するときなど、急激な温度の変化をともなう場面で見られる症状なのです。

家全体の断熱性能が低い場合、暖房設備を利用して暖まるのは一部の空間であるため、寒暖差が生まれやすくヒートショックが発生しやすい環境となってしまいます。断熱材により生活範囲の大部分における寒暖差を小さくすれば、ヒートショックの予防が期待できます。

結露による劣化・カビの発生を防げる

外気により冷たくなった窓や壁に対し、部屋の暖かい空気が触れると結露を起こします。そして、結露により壁についた水滴を放置すると、カビが発生して衛生面や健康面に悪影響をおよぼします。

また、結露は住宅そのものにもダメージを与え、とくに木造建築である場合には腐敗を進めるのです。結露は目に見えるところだけでなく、内部結露と呼ばれる視認できない部分に起こるものもあるため、知らないうちに建物の劣化を進める懸念があります。

断熱材のなかには防湿効果に優れた種類もあるため、それを利用することで壁を露点温度(結露が発生する温度)以上に保ちつつ、結露防止に効果を発揮する家づくりができます。

省エネにつながり電気代が節約できる

断熱性能が高まると外の暑さを室内に伝えづらくなるため、夏は冷房設備の温度設定を過剰に下げる必要がありません。一方、冬も室内の熱を外に逃がさない特性により、緩やかな温度設定でも暖房設備による効果が最大限発揮されるため、冷暖房設備の使用による電気代が抑えられやすいのです。

冷暖房設備を積極的に利用する時期は、稼働時間が長くなりやすいため電気代が高騰しがちです。そのため、断熱材の導入により適温を維持しやすい環境を整えることで、電力消費量が減り光熱費の節約が期待できます。

無駄な電気の消費を抑えて環境保全に貢献できる

断熱材の導入により冷暖房設備の運用が効率化されれば、家庭の総利用電力量が減ります。これは家計に対してだけではなく、地球全体にも良い影響を与えます。

なぜなら、私たちが電力を使うほど火力発電を活発に稼働させることになり、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が増えるからです。昨今頻発している豪雨や大型台風は、地球温暖化による温度上昇が関係していると考えられており、世界中が対処すべき問題として捉えています。

上記の観点から、断熱材の導入は自宅の快適性を高めると同時に、環境保全に貢献できる方法だといえます。


断熱材の種類

種類が多岐にわたる断熱材は、素材によって以下のように分類できます。

  • 無機繊維系断熱材
  • 木質繊維系断熱材
  • 天然素材系断熱材
  • 発泡プラスチック系断熱材

いずれの断熱材にも長所と短所はありますが、短所に関しては施工方法や製品によってカバーされている場合があるため、ここでは各断熱材の素材や特徴に焦点を当てて解説していきます。

断熱材と一口にいっても性質はまったく異なるため、家づくりに断熱材を取り入れる際は必ず「この断熱材のメリットとデメリットを教えてください」と尋ねることを推奨します。

無機繊維系断熱材

鉱石から生成されたグラスウールやロックウールといった断熱材は、無機繊維系断熱材に分類されます。

グラスウールもロックウールも、床・壁・天井と幅広く使用できる汎用性の高い断熱材として活用されています。耐久性・防音性に優れており、いずれも耐熱性が高いため燃えづらく有毒ガスを発生することがありません。

木質繊維系断熱材

木質繊維から生成されたセルロースファイバーやインシュレーションボードといった断熱材は、木質繊維系断熱材に分類されます。

木質繊維であるため湿気を吸収・放出しやすく、湿度を適正に近づける働きが期待できる断熱材です。優れた吸湿性と放湿性は内部結露の防止に役立ち、結露による目に見えない部分の腐食を予防できます。

天然素材系断熱材

羊毛から生成されたウールブレス、コルクから生成された炭化コルクなど、天然素材からつくられた断熱材は天然素材系断熱材に分類されます。

天然素材であることから環境負荷が小さく、人体に対する悪影響もないのですが非常に高価です。費用対効果の観点ではほかの断熱材に劣るため、環境や人体に対する負荷を極めて小さくしたい場合など、限られた条件下における候補となります。

発泡プラスチック系断熱材

ポリスチレンフォームやウレタンフォームといった断熱材は、発泡プラスチック系断熱材に分類されます。

「ビーズ法ポリスチレンフォーム」や「押出法ポリスチレンフォーム」など多くの種類があり、その多くが優れた断熱性と加工性を備えています。以下は発泡プラスチック系に分類される、主な断熱材の種類と特徴です。

断熱材と種類 特徴
ビーズ法ポリスチレンフォーム 湿気に強く、軽量であるため加工性・施工性にすぐれている
押出法ポリスチレンフォーム 薄くても高い断熱性能を発揮し、水・湿気に強いことから基礎や土間床の施工にも使える
硬質ウレタンフォーム 素材の気泡に含まれるガスの熱伝導率が低く、極めて高い断熱性能を発揮する
ポリエチレンフォーム 柔軟性に優れているため床や壁のほか、屋根や屋上などに適したさまざまな形状の製品がある
フェノールフォーム 長期的に断熱性を発揮し、防火性が高く炎があたっても煙や有毒ガスがほとんど発生しない

断熱開口部材

断熱効果のある開口部材(窓や出入口にもちいる部材)として、以下を断熱材とともに導入することがあります。

  • 複層ガラス:二重構造により熱移動を抑えたガラス
  • 断熱サッシ:窓枠の熱伝導を抑える断熱効果を備えたサッシ
  • 断熱ドア:断熱構造が施されたドア

断熱サッシや断熱ドア、特定の複層ガラスには遮音効果が期待できるため、防音対策として役立つ場合もあります。

断熱材を導入するときの注意点

正しい方法によって断熱材の導入が行われなかった場合、本来想定される断熱効果が発揮されなかったり、内部結露を起こしたりといったトラブルにつながります。

たとえば、グラスウールやロックウールは一度含んだ湿気を放出しづらく、カビや腐食の発生につながります。これを防止するためシートにより防湿処理を施しますが、シートに隙間があればそこから湿気が流入し、結露を起こす可能性が高まるのです。

正しい対応ができるか否かは施工業者の技術力次第であるため、依頼側が直接改善できる部分はないのですが、依頼前に相談した際の受け答えや過去実績からある程度の見極めはできます。とくに口コミを検索した際、悪評がヒットするなら依頼には慎重になるべきでしょう。

まとめ

断熱材を住宅に導入すれば、1年を通じて室内を適温に保ちやすくなり、経済面・健康面・環境面にメリットがあります。四季の移り変わりによる寒暖差が激しい日本において、生活の質を向上させる重要な役割を担っているため、断熱材は住環境の快適性を追求する際に不可欠といえるでしょう。

本記事が、家づくりの参考になれば幸いです。