地震や台風などの自然災害に備える「強い家づくり」のポイント3つを解説
自然災害に備えた家をつくるうえで重要となるポイントは、立地・構造・設備の3つです。とくに発生件数の多い地震や台風に関しては、「自然災害に巻き込まれづらい場所に住む」という観点から立地の選定が重要となります。
ここでは地震や台風を始めとするあらゆる自然災害に備えた、災害に強い家づくりのポイントをご説明します。家を建てることを検討中であれば、本記事は後悔しない家づくりのためお役に立てるはずです。
自然災害に強い家をつくる3つのポイント
家づくりにおいて、まず重要となるのは「どれだけ災害に強いか」よりも「どれだけ被災の可能性が低いか」です。 被災時に被害を最小限にできることも大切ですが、被災そのものを避けるに越したことはありません。そのため、自然災害に強い家づくりにおいては、とくに立地が重要な要素となります。 立地を含め、自然災害に備えた家づくりを進めるうえで注目すべき要素は3つに大別できます。 もちろん、すべての要素が重要ではありますが、被災の可能性を最小限にする観点では立地が重要となります。家の構造と設備は被災した際のダメージを抑えたり、ライフラインと切断された際の快適性を維持したりといった側面から重要になる要素です。 立地・構造・設備の観点から、具体的にどのような家づくりを検討すれば良いのか解説します。
自然災害に強い家を立地から逆算する
自然災害に強い家づくりにおいて、とくに意識すべき災害は地震と台風です。
なぜなら、激甚災害(げきじんさいがい)の大部分は地震と台風だからです。
激甚災害の多くは地震と台風
激甚災害とは、被害が大きく被災自治体や被災者への援助が必要となる災害を指す言葉です。2021年7月時点において、過去5年のうちに激甚災害に指定された自然災害は、そのほとんどが地震と台風でした。
そのため、家づくりにおいては地震と台風に備えることが重要と考えられるのです。そして地震や台風に遭遇するリスクや、被災時の被害の大きさを予測するにあたり役立つのが、国土交通省や地方自治体が公開するハザードマップです。
自然災害のリスクをハザードマップで確認
家づくりに関するコンテンツの多くがハザードマップを取り上げているため、すでにハザードマップの存在はご存知かもしれません。
国土交通省が運営するハザードマップは、洪水や土砂災害、高潮や津波など自然災害におけるリスクを可視化した地図です。このうち「地形分類」と呼ばれる表示項目は、画面に含まれた土地の特性を表示するため、端的にどのようなエリアなのか把握したいときに役立ちます。
たとえば、東京都渋谷区を画面に収めた状態で「地形分類」の機能をオンにすると、以下のような説明が表示されます。
“河川氾濫のリスクはほとんどないが、河川との高さが小さい場合には注意。縁辺部の斜面近くでは崖崩れに注意。地盤は良く、地震の揺れや液状化のリスクは小さい。”
引用:国土交通省「重ねるハザードマップ」(東京都渋谷区の台地・段丘の解説)
渋谷区から移動し、港区を画面に収めた状態で「地形分類」の機能を使用すると、違った説明に切り替わります。
“河川の氾濫に注意。地盤は海岸に近いほど軟弱で、地震の際にやや揺れやすい。液状化のリスクがある。沿岸部では高潮に注意。”
引用:国土交通省「重ねるハザードマップ」(東京都港区の氾濫平野の解説)
また同じ港区内でも、氾濫平野・山地・後背低地・砂洲(さす)など複数の地形が入り混じっており、狭い範囲であっても自然災害リスクが異なる様子を見て取れます。
これらの機能を活用すれば、家を建てるエリアを検討する際、自然災害リスクが比較的小さい場所を選ぶことが可能です。
ただし、ハザードマップが示す各地域の自然災害リスクは、そのエリアにおける一般的なリスクをあらわしており、個別具体的なケースに対応しているわけではない点にご留意ください。
家の構造は「被災リスクの高い災害」の対策を重視
とくに地震の発生時に、家の構造は被害状況の違いを生みます。たとえば、固い地盤の上に建っているという前提であれば、家の構造は長方形に近いほど地震に強くなります。
凹凸の多い複雑な構造になると、局所的に負担がかかる場所が生じるため、その場所を起点として破損が起こってしまうのです。また大きい窓が設置されていたり、車庫や倉庫になっていたり、屋内と屋外をつなぐ「壁がない箇所(開口部)」が多ければ耐震性は下がります。
家の建築に使う素材も強度に関わってきますが、一概に「木材だから弱い」や「鉄筋だから強くて安心」といった結論にはならず、木造でも筋交いや耐力壁を駆使すると強い家になります。反対に、鉄筋でも壁の配置のバランスが悪ければ地震に弱い家になるのです。
地震以外の災害に関しては、浸水の予防や浸水時の脱出に考慮された家の構造が好ましいと考えられます。国土交通省が公開する以下の例は、水害のダメージを抑えるために効果的とされる構造です。
出典:国土交通省「浸水の予防・人命を守る家づくり」
また1階が浸水したとしても、2階を活用して通常通りの生活を継続できるよう工夫されている構造が理想的です。
国土交通省のホームページでは、以下の画像のように外部からの救助を想定し、屋根部分に外部へ脱出するための出口を設置することも有効としています。
出典:国土交通省「浸水の予防・人命を守る家づくり」
出口を設ける分、多少の追加費用が生じるものと予想されますが、人命を守るための工夫であるためぜひ積極的に検討してみてください。
自然災害時のトラブルに備えて家の設備を選択
東京都防災ホームページが公開する「首都直下地震等による東京の被害想定」によると、阪神淡路大震災以降に発生した既往地震災害時には、ライフラインの復旧までにおおむね以下の期間がかかっています。
項目 | 阪神淡路大震災 | 東日本大震災 |
電気 | 約260万戸の停電が、倒壊家屋を除き発災6日後に復旧 | 約466万戸の停電が、発災3日後に約8割復旧、発災8日後に約9割復旧 |
都市ガス | 約84.5万戸の供給停止が、倒壊家屋を除き発災85日後に復旧 | 約46万戸の供給停止が、発災1か月後に約8割復旧、発災2か月後に約9割復旧 |
上水道 | 約127万戸の断水が、発災42日後に仮復旧、91日後に全戸復旧 | 約160万戸の断水が、発災1か月程度で約9割復旧 |
参考:東京都防災ホームページ「」
電気はもっとも復旧が早い傾向にあり、ガスと水道は大半が復旧するまでに1~2か月程度の時間を要する傾向にあります。
上記を踏まえて、ライフラインが切断されるほどの大きな自然災害が生じたとき、できる限り通常に近い生活を送るため導入候補となる設備は以下の通りです。
- 太陽光発電設備
- 蓄電池
- エコキュート
太陽光発電設備は、停電時に最低限の電力を自給自足する設備として有効です。太陽光発電設備単体では一定の日射量がある朝~夕刻前までしか発電できませんが、日中に発電した電気を蓄電池に蓄えておけば夜間にも電気を使用できます。
また、エコキュートは常にタンク内に貯湯する仕組みとなっているため、断水時にはタンク内のお湯を生活用水として使えます。タンクの容量は主に300~600Lのものが多いことから、使い方によっては数日分の生活用水を賄えるはずです。
ほかにも、電気の復旧の早さを踏まえてIHクッキングヒーターを導入したり、災害時に雨水を水道代わりにするため貯水タンクを設置したりといった方法が挙げられます。
なお、住宅に新設するような設備は高額であるため導入が難しい場合、以下のような非常時の持ち出し品を備えるだけでも自然災害への対応力は高まります。
- 非常用の飲料水
- アルファ化米、レトルト食品、缶詰などの非常食
- ティッシュペーパー、簡易トイレなどの清潔品
- 風邪薬、絆創膏などの救急用品
- デジタル機器を充電するためのバッテリー
上記に加えて、乳幼児がいるならオムツや離乳食、高齢者がいるなら柔らかい非常食を用意するなどの工夫が有効です。
まとめ
以前より日本では甚大な被害を及ぼす地震や台風がたびたび起こっており、とくに昨今は温暖化の影響なのか大型台風の直撃が多発しています。そのため家づくりにおける災害対策は、とくに地震と台風を意識するのが好ましいでしょう。 記事内で述べたように、自然災害に備えた強い家づくりは「立地・構造・設備」のバランスが重要であり、なかでも被災そのものを避ける観点では立地選定が重要となります。 まずは家を建てる候補地をハザードマップで調べ、どのような特性の土地なのか確認してみてください。