子どもの成長に良い効果をもたらす間取りやアイデア

子どもが小学生、中学生と成長したとき「最適な勉強部屋を用意してあげたい」と思うのが、親心というものです。

ここでは、子どもの成長に良い効果をもたらすといった意見のある間取りやアイデアをご紹介します。前半は宿題やテスト勉強をする小学生~高校生までの間取りについて、後半はさらにさかのぼって幼少期の子どものための間取りについて触れます。

なお、「学術的に証明されたもの」ではない通説を含むため、効果を保証するものではありませんが、勉強部屋を用意する際のアイデアの一例としてご参照ください。

子どもの頭が良くなるアイデアの共通点



勉強環境を整えて、子どもの学力を伸ばしやすくするアイデアは多く、「頭が良くなる間取り」といった内容のセミナーもあるほど奥の深い分野です。

今回は「リビング学習」と「本棚の設置」についてご紹介しますが、家の形や広さは家庭によってそれぞれ違います。そのため、表面的なアイデアのみを取り入れるのではなく、本質的にどのような工夫が子どもへプラスの影響を与えるのか、親が理解しておく必要があるのです。

プレジデントオンラインの記事『「頭がいい子」の家にある意外な共通点』のなかで、建築学を専門とする東京大学大学院の大月敏雄教授は、東大建築科の生徒の自宅から以下の場面に配慮した工夫が見てとれると言及しています。

  • 勉強をする場面
  • 子どもたちの好奇心を刺激する場面

勉強をする場面とは、机に向かって宿題をこなしているときだけではありません。

テレビニュースから生まれる知的な話題について、親と子どもが話を交わすことも勉強をする場面の1つです。つまり、勉強をする場面を意識した間取りとは、コミュニケーションが生まれるよう配慮した間取りともいえるでしょう。

つぎの章で解説するリビング学習は、まさにコミュニケーションを大切にしつつ、学習に適した勉強場所を設けられるアイデアの一例です。

子どもの頭が良くなる「リビング学習」とは?



近年、頭の良くなる間取りのアイデアとして、リビング学習が注目されています。

脳の発達メカニズムを研究する瀧靖之氏が監修した書籍『東大脳の育て方』でも、「東大生のほとんどがリビング学習をしていたというのはほんとう!」という見出しとともに、複数の東大生が勉強場所としてリビングを活用していたことが記載されているのです。

具体的に、同著に記載されているアンケート調査では、「どこで勉強していた?」という質問に対して、自室で勉強していたと回答した割合が17%となっており、調査対象となった東大生のうち83%は勉強場所をリビングとしていたことが公開されました。

東大生が回答したリビング学習の魅力とは?


東大生の意見として、どうしてリビング学習が効果を発揮するのか、同著に掲載されているポイントをいくつか挙げてみます。

  • 学んだことを、そばにいる親へ話せるため記憶の定着が良い
  • 分からない部分をすぐ親に聞ける距離感である
  • 疲れたときに親と会話することで気分転換になる
  • 季節を問わず適温に保たれているため、勉強に取りかかりやすい
  • ごはんを食べたあと、勉強へすぐ取りかかれる

気分に応じて学習場所にリビングを選んだり、自室を選んだり使い分けるといった意見もありましたが、おおむね「勉強と生活の境界線を減らすことで効率的に勉強できた」という意見が多く、自室にこもることで勉強効率が下がるといった主張も見られました。

ただし、リビングを勉強場所にする場合、食事用のテーブルと勉強机は別々であることが理想です。

食事用のテーブルには、飲み物や調味料がこぼれていることもあり、勉強道具が汚れてしまう可能性があるからです。そのため、食事用のテーブルやソファからやや離れた位置に、勉強用のテーブルを設置するよう検討してみてください。

リビング学習を中心に気分で選べる環境が理想的


なかには「浅い集中のときはリビング、深い集中がきたら自室で勉強をする」といった方法に効果を感じたという意見もあったようです。

集中が浅いにもかかわらず、誰の目もなく、携帯電話や漫画などの誘惑があるなかで勉強に打ち込むことは大人でも難しいものです。かといって、勉強に使える自室がなくリビングしか選択肢がなければ、気分によっては「家族の声が耳について集中できない」と思うこともあるでしょう。

ただし、幼少期から自室で勉強をさせる習慣をつくると、リビングで勉強をすることに違和感を覚える可能性があります。

ですから、精神的に成熟するまでのあいだはリビング学習を主として、親が子どもの勉強に寄り添う形でサポートし、ある一定の年齢を迎えたときに「新たな勉強場所の選択肢として自室を与える」という方法も1つの候補に挙がるでしょう。

このことから、勉強場所を一箇所に固定するのではなく、子どもの気分に応じて環境を選べるよう配慮することも有効だと考えられます。

子どもの好奇心に応えられる部屋作り



先ほど紹介した瀧靖之氏による別の書籍『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』では、幼少期の子どもについての言及があります。

著者の「子どものころ、どんな風に過ごしていたのか」といった質問に対して、難関大学生の多くは子ども時代に図鑑を与えられていたと回答したとのこと。文字を読めるか、読めないか分からないくらいの年頃から部屋に図鑑があり「これは何だろう」と好奇心を抱いたものに対して、すぐに情報へ触れられる環境がプラスに働いたようです。

間取りの観点からいえば、子どもが過ごす部屋には本棚を用意し、図鑑を始めとした「子どもの興味関心を与える本」を置いておくと良いでしょう。著者の氏は、図鑑を与える時期として「遅くとも3、4歳には用意してあげてほしい」と述べていることから、できる限り早くに子ども用の本棚を設けられるのが理想だと考えられます。

ただし、自宅に図鑑を置いておくだけでは、好奇心を十分に学びへ変えられる環境とはいえません。あくまでも、家にある図鑑はバーチャルな知識をもたらしてくれるアイテムであり、リアルな体験を与えるために可能な限り実物を見せてあげることも重要だと述べられています。

このことから、子どもの好奇心に応えられる部屋作りは重要であるものの、家の中身を工夫するだけで「勉強好きな子どもになってもらうために十分な環境」とはいえません。最終的には、親の働きかけが大切になるのです。

子どもの頭が良くなる間取りに絶対の正解はない


人間はリラックスできる環境におり、同時に適度な緊張感があるときに集中しやすいとされているため、リビング学習は理にかなったアイデアだといえます。一方、やはり集中しやすい環境は子どもの数だけ違った意見があるため、必ずしもリビング学習を強制することはおすすめしません。

前述したアンケート調査による結果でも、東大生の83%はリビング学習を取り入れていましたが、17%は自室学習でした。このことからも、勉強場所に絶対の正解はなく、親と子どもが一緒に「どこで勉強すれば集中しやすいのか」を探っていく意識が必要だと判断できます。

冒頭にて述べたように家の形や広さは違うため、最終的には「勉強をする場面」や「子どもたちの好奇心を刺激する場面」へ配慮しつつ、子どもたちの性格に応じた部屋作りを進めるように心がけてみてください。

最終的には、子どもが勉強に向き合うために試行錯誤してサポートをする、親の柔軟さが子どもの学習意欲に関係するはずです。

まとめ


今回は、子どもの頭が良くなる間取りをご紹介しました。

子どもの頭を良くする環境に共通することは、以下の2つが挙げられるようです。

  • 気軽に勉強を始められる環境である
  • 好奇心を育む(例:本棚に図鑑を置く)環境である

本記事に登場した瀧靖之氏の書籍のなかには、つぎのような指摘もあります。

多くの子供は、3、4歳くらいになると、徐々に「好き・嫌い」を自分で判断するようになっていきます。すると、せっかく図鑑を与えても、「図鑑は嫌い」「花なんて嫌い」などと言われてしまうかもしれません。反対に、その前から身近にあったものは、自然に「好き」という判断をします。

引用:著・瀧靖之『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)

上記からも、本記事で取り扱ったような「子どもの頭が良くなるような工夫」を、すこしでも早い時期から取り入れておくことが重要であると読み取れます。幼少期から学ぶことを習慣化させるように工夫し、「勉強なんて嫌い」といわれるまえに勉強することが当たり前だと思える環境を作っておくことが重要なのです。