適切な維持管理とは!住宅の維持管理について考えよう!

みなさんは、住宅の維持管理を考えたことがありますでしょうか。

マンションであれば修繕積立金など原資として管理組合などが建屋そのものの維持管理をしてくれますが、戸建て住宅となれば自分で適切に維持管理をしなければなりません。

ここでは、ご自分の住宅を適切に維持管理するための思想と手法についてご紹介したいと思います。

維持管理計画とは?


住宅を維持管理するにあたり、行き当たりばったりで維持管理をしていると予算も多額となり、捻出することが困難となってしまうケースがあります。

突発的な事象についてはある程度仕方がないこともありますが、ある程度予見できることについては事前から準備をしておくことが極めて重要です。

ここでは、維持管理計画の思想についてご紹介したいと思います。


  • 定期点検

インフラの基盤とも言える重要な公共施設(橋梁・門型標識・ボックスカルバート構造物など)は、5年に1度の定期点検が定められています。これは、笹子トンネル天井板崩落事故を契機として、平成26年7月に道路法施行令が一部改正されました。それに伴い、道路管理者は5年に一度の定期点検を義務付けられたのです。

このように、損傷の進行具合を定期的に確認して、必要に応じて補修を行うという概念に基づいています。

これを住宅にも応用することをおすすめします。屋根や外壁などを定期的に点検することにより、損傷度から健全度を判定します。クラック延長など定性的に判断できる内容については、損傷が進行しているのであれば「経過観察」とするのか「5年以内に補修」するのかなど、状況に応じて対策を講じます。ポイントは、主部材に影響を与えるような損傷であれば速やかに補修し、そうでない損傷は基本的に経過観察するのが良いでしょう。

致命傷となる様な損傷は、迅速に補修を行わないと住宅へのダメージが刻々と深刻化していきます。住宅を長寿命化及び延命化させることが重要ですので、適切に損傷を発見する観点からも定期点検は極めて重要であると言えるでしょう。


  • LCC最小化

LCCとは、ライフサイクルコスト(Life cycle cost)のことを指します。住宅の建設から、保全、修繕、解体(廃棄)までの全期間に要する費用が該当します。初期の建設費用であるイニシャルコストと運用、保全、修繕等のためのランニングコスト、解体コストなどにより構成されています。イニシャルコストは建設時にかかる予算ですので仕方がないと思いますが、補修などを行うにあたってのランニングコストは維持管理計画を適切に管理することにより最小化することができます。

維持管理計画は、住宅を適切かつ効率的に維持管理するうえでの基本となるものであり、着実に進める必要があります。メンテナンスサイクルとは、「点検」⇒「診断」⇒「措置」⇒「記録」といった一連の維持管理の流れを計画的に実施し、住宅の状態や対策の履歴等のデータを蓄積して次の点検や劣化予測に活用するものであり、このサイクルの構築を進めます。メンテナンスサイクルを繰り返す中で、維持管理のノウハウを蓄積し、点検・診断方法や対策の効果検証、計画の見直し等を進め、PDCA(P:Plan・D:Do・C:Check・A:Action)の考え方に基づき運用状況の評価・改善を行い、メンテナンスサイクルのスパイラルアップを図り、維持管理計画の一層の充実を図ることによりLCC最小化を実現します。

スパイラルアップの概念からも分かるように、PDCAサイクルは一度行えば終わるというものではありません。何回もPDCAサイクルを繰り返すことにより、計画そのものがブラッシュアップされますので、より洗練された維持管理計画へと進化します。

住宅建材を選ぶコツとは


新しい住宅を建築したときの思想についてですが、見た目が良かったり機能性が良かったりと、各メーカーは良い部分を全面的に押し出して説明して来るでしょう。

しかし、経年劣化にどこまで耐えられるのかなどの耐久性については、そこまで詳しく説明しないところが多いと思います。一番最初が一番良い状態であるのは当たり前なのです。重要なのは「良い状態をいつまで保つことができるのか」です!

現実には存在しませんが、住宅を維持するうえで補修や修繕が全く必要ない部材のみで構成されていると仮定すると、住宅に関する予算とは一番最初に支払うイニシャルコストのみで良いこととなります。

しかし、コンクリートですら寿命は100年程度と言われています。他の建材は、それ以下の寿命であると想定されます。部材が悪くなると部分的に補修をするのか、その部分を丸ごと新品にするかなどを検討しなければなりません。このように、住宅を維持するためには必然的にランニングコストが必要となるのです。

上述したように、維持管理計画を検討しLCC最小化によりランニングコストを抑えることが極めて重要です。基本的な考え方は「著しく悪くなる前に補修する。」です。

著しい損傷となると、住宅の主部材まで影響を与えることにより補修費用が増大します。そこで、点検結果を踏まえて完全に壊れてしまう前に手を打つことが大切です。

まとめ


ここまで、住宅の維持管理についてご説明をさせて頂きました。

住宅の維持管理とは、事後保全で対応するのではなく、維持管理計画に基づく予防保全で対応することが極めて重要です。

定期点検結果を基に、各損傷の深刻度を考慮して技術的知見を交えながら健全度を評価する仕組みを構築することがベストです。屋根の上など、高所作業車を持って来ないと見えない部分などもあります。また、技術的知見に基づいて判断するとなると、専門知識を有した適切な技術者の配置も必要となるでしょう。定期点検に予算がかかってくるかもしれませんが、適切に損傷を把握することによって予防保全の観点を取り入れて維持管理することが、結果的にはトータルコストを抑えることにも繋がり住宅の長寿命化へも繋がるのです。せっかく建築した思い入れのある住宅ですので末永く住んでいただくためにも、是非ともみなさんには適切な維持管理計画を導入されることを強くおすすめします。

これから住宅を購入される方にとって、少しでもこの記事がお役に立てたのであれば幸いです。

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